3話 ある夢
その夜。
僕は夢を見た。
照りつける太陽。
青く、どこまでも広がる空と雲。
それをまるで鏡のように反射する地面。
その夢に揃っている景色達は、
全て初めてのものだった。
これがなんの夢なのかは分からない。
だけども強く印象に残る夢だった。
それから、僕はその夢を見るようになった。
毎日、ではない。でもその夢は見る度にはっきり記憶に残る。だから鮮明に思い返せる。
一面全てが見たことのない不思議な空間に立っている夢。夢の中では動けないが見る度に少しづつ場所が、自分のいる位置が変わっていっていた。同じような景色なのに何故かそれがわかってしまう。初めて「祠」を見たあの日から毎日そこを通っている。理由は帰り道だからというだけだ。道に入ってはいないが、祠は毎日存在している。あの時引き返して正解だったのか、あの夢以外に日常は変化していない。その夢だって別に実害がある訳では無い。単に見たことは無いが綺麗な景色のところにいるというだけだ。
「でもボーッとすることは増えたけどねぇ。」
そんなある日の昼下がり。その日は休み前最後の日で、寒さもいっそう酷くなってきた頃だった。あの夢の事を考える時間が多くなり、少し上の空ではあったかもしれない。しかしどの辺が「でも」なのか分からない。君たちはついさっきまで、唐揚げにうどんは合うのかの話をしてたんじゃないのか。なぜ突然僕の話題になっている。
「その話は5分くらい前に終わってるって。」
「な…それは悪かったな。」
まさか、さっきまでよく分からん唐揚げ論争をしてたから夢のこと考えてたのに…そんなに時間が経ってたか。
「それで?」
「ん?」
「何をいつにも増してそんなに考えてるのかってことだろ。」
「あー…」
言うべきなんだろうか。夢はともかく、あの祠と道は。あれから毎日現れている以上、自分の勘違いでは無い可能性は高い。だけど、それを言ったところでこの2人は…
「別に、話したくないことならいいんだけどさ…」
「!」
「変わっていっちゃうのかなあ、って。」
「どういうこと?」
「いや、なんていうか…」
「…」
「…わかんないや笑」
「なんだよ!」
「うーん、若葉みたいに難しいこと言おうとしちゃった!」
「おい。」
「とにかく!悩んでることあったら言ったらー?ってこと!」
「せっかく話してるのに上の空は普通に失礼だしね!」
む…それはそうだ。
「それなら…」
「お?」
「いや、大したことじゃないんだが…」
2人に(夢のことは覗いて)『あの道』の話をした。
「うーーーーん…」
「そりゃ不思議だなこりゃ。」
「…お、おう。」
「なんだよ。」
「いや…もっと茶化すものかと…」
「おーい、俺たちゃ友の悩みを茶化すほどチャラけちゃいないぜ。な?自由。」
「うん!若葉はそういう冗談いうタイプじゃないもんね。」
…はは。もっと早く言えば良かった。
そんなこんなで、放課後は僕が2人を待って3人でそこを通ってみようという話になった。
「ほあー...なんだこれ...。」
隣の貴斗が呆然とつぶやいた。まあこれを初めてみるとそんな反応になるだろう。
貴斗もずっとここに住んでるんだし。
「こんなとこにこんなの無かったよなー。」
「あ...ああ、工事とかしてたっけ...?」
「いや、毎日通ってたけどそんなのしてなかった。」
「だよなぁ...」
改めて考えると、本当に意味が分からない。
ある日突然、知っている景色に知らないものが追加されるなんて。
「ねぇ、行ってみないの〜?」
「…俺はちょいチビりだな。」
「同意だ。」
「だよねぇ〜。」
このやり取りは間髪入れず。満場一致らしい。
3人いても。いや、3人だからこそ、お互いになにかあったら嫌だから。僕たちは簡単に日常を壊したりしない。せっかく明日からは長期休みなんだ。
夏至駅~寒々しい世界について~ @yasaka_1610
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