精神世界のような不思議な世界に飛び込んだ主人公が数々のトラウマを克服し、傷つき悶えながらも、前へと進み続ける物語です。
哲学的な要素も含んだ不思議で抽象的な世界観でありながら、高い文章力に裏打ちされた比喩表現によって、それらの「世界」が残酷なまでのリアリティで描かれています。それゆえに物語への没入感も凄まじく、主人公「ゆりえ」が苦痛を感じる場面では、読み手である私自身も、胸や胃のあたりを押さえてしまうほど。
この不思議な世界の謎や、主人公の先導役として「常に半歩前」を行くメルミの正体など、謎解き要素も豊富にあり、読み飽きることがないでしょう。ページをめくるたびに深みにハマってゆく。まさに深淵を覗く気分を味わうことができます。
ただ、やはり「トラウマ」を扱う作品ということで、場合によっては読み手自身のトラウマを掘り返されてしまう可能性もありますので、その点にはご注意を。そういったものに抵抗がない方なら間違いなく楽しめる作品ですので、ぜひ読んでみてください。