概要
あの夏の日比谷は、いつも甘いクリームの匂いがしていた。
この物語は、かつて日比谷に実在した洋菓子喫茶「アマンド」を舞台に、大学生の淡い恋と青春の思い出を振り返る回想録です。主人公はアルバイト先で年上の里美さんに惹かれ、共に名物のリングシューを味わったり、日本劇場への出前を経験したりした日々を瑞々しく描写しています。特に、自転車に二人乗りをして感じた甘い香りや、夜の日比谷公園で過ごしたひとときは、かけがえのない記憶として綴られています。年月が経ち店が消えた今でも、当時の甘いクリームの匂いは、働く喜びを知った大切な人生の断片として心に残っています。短い夏を通じて描かれるのは、単なる初恋の記録ではなく、誰かと時間を共有する尊さという普遍的なテーマです。