第5話 代償




辿り着いたのは人通りの多い駅前通り

さっきまでの非日常はすっかり振り切り、

夕日に照らされたいつもの通学路が広がっている。

数人が突然現れた俺たちに驚き一瞥するも、すぐに前に向き直り何事も無かったように歩き去る。


「すごいな…俺の脚、バスに乗るよりずっと速え」

『よし、うまく逃げ切れたようだな』

「あいつは…」


今走ってきた道を振り返るが、白い影は無かった。

無事に逃げられたみたいだ。


「よし…逃げ切れて良かった…」

『ああ…』

やっとの思いで抜け出せた危機に肩の力が抜ける。


「スナック、助かったよ。

お前がいなかったらどうなったか」

『いや礼には及ばない。

元はおまえに助けられた命、惜しくはない』


――…??

今の会話、なんだかうまく噛み合ってない気がする…


…まあひとまずは腹が減ったから飯でも食うか。


「よし、じゃあお祝いにうまい飯喰いに行くぞ!

ほら早く実体化しろよ!

俺は腹減ったぜ!」

どでかいことを成したあとはまず飯だ。腹が減っては戦はできぬ。


『…いや、我はあと少しで消える。

世話になったな』

浮足立ってた俺は一気に撃ち落とされる。

――やっぱりなんだかおかしいと思った。


"チカラを託す"――


………

……


「…おまえ、もしかしてこのまま消えるっていうんじゃないだろうな?

最初から消えることがわかってて俺にチカラを…?」

『…我は肉体をすべてマリョクに変えておまえに託した。

故に今お前に宿っているマリョクが消える同時に我も消える』

「…!!!」

こいつ…!!


―"良かった…。ケガがなくて…"―

―"あとは頼んだぞ、シュート"―


…なんでいつも…なんで俺は…

「なんで…なんでお前そんな大事なこと言ってくれないんだよ!」

『どうした?

初めて手に入れたマリョクを失うのが惜しくなったか?』

「この状況で何をのんきなことを…!」

どうして"みんな"こんな俺の為に死ぬんだ。


「…どうしたらいいんだよ…なにか方法はないのか。」

『何をそんなにあわてている。』

「慌てるだろ!

いま俺のせいで死にかけてるやつがいるんだぞ!」

『案ずるな死ではない。

ただ消えるだけだ。』

何を言ってるんだこいつは!?

消えるのも死んでるのと一緒だろ!


頭をぐるぐると巡らせる。

―マリョクを使わなければいい?

―いや、マリョクは熱量と同じ。基礎代謝のように減っていく。


「それに…」

『??』

それに俺には本来ニンゲンにあるはずのマリョクを生成する機能そのものが存在しない。

いずれは0になってスナックは消えてしまうだろう。


「…このまま俺がマリョクを浪費せずに過ごしたら、お前はどれだけ生きられる?」

『いまおまえに宿っているマリョクが無くなるまでの時間はおおよそ半日ほどだろうな。』


―思ったより時間はない。

「どうしたら良いんだ…?」

スナックは慌てふためく俺をただじーっと観察していたが…。渋々と考えをまとめるように話しだした。


『…ひとつだけ可能性があるとすれば…だが…』

「…!なんでもいい!教えてくれ」


『白い影…奴をのして、マリョクを奪うことができればあるいは…』


………

……






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

La+2 @ESNOSE

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ