罠♡

プラチナサファイア

罠♡

 


また僕を

否定された……


これで5人目

みんな僕の

想いを

こばんだ……


イケメンだったら

上手くいったのかな


僕の心は

灰色に染まる……


アオハルなんて

存在しない……


少なくとも

高1の僕には……




彼女を見た時

心を揺さぶられた


僕が通う共学校の

近くにある

中高一貫校の

ミッション系

お嬢様学校……

その中等部に通う

14歳の

きらめく少女……


彼女はアリス……

この界隈では

有名人だ……


淡い桃色の髪の

ツインテール

子供と大人が

同居する容姿

他人とは異なる

圧倒的なオーラを放つ

アリス……


ゆえにみんな彼女に

きつけられる


うちや他校の猛者もさ

彼女に告白しては

ふられるという事が

日常的に繰り返された




彼女は誰にも

心を見せない

孤高な存在……


僕なんか

とても無理だ

心のふたを閉じ

本は僕の心を

いやしてくれる

そんな理由で決めた

学校近くにある

ショッピングモールない

書店でのバイトに向かう


僕の日常は

この繰り返し……

平凡なルーティン


ただ遠くから

甘く

とろけそうな

彼女を眺めている


そう……

それでいいんだ……と

自分をごまかして……




春から夏の終わり……


バイト帰りの

最寄り駅まで

歩く時間が

なんとなく好きだ


今日は満月……

月の見せる

表情と仕草しぐさ

僕の心を

なごませる


雲が時折ときおり

月の表情を隠す

幻想風景の

帰り道……




くてに立つ人影

シルエットでもわかる

その存在……


雲が通りすぎ

満月の月光つきあかり

その桃色の髪

ほのかな風に揺れる

ツインテール

ふわりとなびく

制服のスカート


しなやかで

可憐な姿を

余すところなく

せつける……




「アリス……」


僕は思わず

つむいだ……


どうしてこんなところに

なぜ……

戸惑う僕をよそに

彼女はからだ

心の距離を詰める




「ずっと見てたよね?」


そうか……

僕の視線なんか

とっくに気づかれて

いたんだ……




「そんなつもりじゃ」


「ごめん……」


僕はただ

謝ることしか

できない……


「えっ……」

「どうして謝るの?」

「アリスもずっと」

「あなたを見てたよ」


彼女の意外な言葉に

僕は動揺する……






「とりあえず……」


「恋から始めようか♡」






「素敵なおねえさま♡」




あぁそうか……

男がふられるわけだ

手を差しのべる彼女に

僕が断る理由なんて

ない……


アリスの指は

いやらしく

アリスの手は

柔らかく

暖かく……


心地よくて

冷たい……


それだけで

すべて満たされる




月の道しるべを

僕たちは

歩く……

いとおしく

手をつなぎながら……


「そういえば」

「おねえさま♡」

「お名前は……?」


可愛らしく

いじらしく

知っているはずの

僕の名前を

アリスの瞳は

あやしく

問いかける






は……」


「リリィ」




恋が始まる……

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罠♡ プラチナサファイア @textekitoo

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