第10話
エピローグ ──伝承
戦争が終わり、幾つもの季節が過ぎた。
かつて血に染まった大地は緑に覆われ、人々は再び手を取り合うようになった。
村の広場には小さな祠が建てられ、そこには一本のタクトと葉を模したネックレスが奉られていた。
それらは今も淡く光を帯び、まるでアリアが人々を見守っているかのようだった。
◇
一人の老人が、杖をつきながら祠を訪れた。
皺に覆われたその顔は、かつて幼くして親の亡骸の前で泣いていた少年のものだった。
彼は震える声で碑文を読み上げる。
碑文
ここに記す。
魔女アリア、命を賭し歌を放ち、
大地を癒し、空を晴らし、心を清めたり。
女神にあらず、聖女にあらず。
ただ、魔女として。
読み終えると、老人の頬を静かな涙が伝った。
「……ありがとう、アリア。
あの日の歌が、私の人生を導いてくれた。」
彼が深く頭を垂れたその瞬間、そよ風が吹き抜け、どこからともなくハープの調べが響いた。
◇
そして今も人々は歌う。
母は子に子守唄として。
村の人々は祈りとして。
──癒しの魔女と奇跡の詩。
その名は歌と共に、永遠に語り継がれていく。
癒しの魔女と奇跡の詩〜ARIA @Minoru0927
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