第9話──奇跡の詩
アリアの歌声が戦場を満たした。
その響きは血と憎しみの叫びをかき消し、兵士たちの胸に直接染み込んでいった。
怒号は止み、剣戟の音は消え、氷も雷も炎も静まり返る。
荒れ果てた大地には若草が芽吹き、川は清らかに流れを取り戻した。
裂けた空からは黄金の光が降り注ぎ、兵士たちの頬を温かく照らす。
兵士たちは次々と膝を折り、涙を流した。
「……嗚呼……なんと心優しき女神様……」
彼らの胸に浮かんだその思いは、同じ祈りのように天へと昇っていく。
だが、アリアは心の中で囁いた。
──違う。私は女神なんかじゃない。
私は、魔女よ。
その言葉は歌と重なり、さらに力を帯びていった。
アリアの体は光へと変わり、衣も髪も、すべてが粒子となって宙に舞う。
最後まで凛とした微笑みを浮かべ、彼女は天へと昇っていった。
その歌声だけが残り、人々の胸を震わせ続けた。
──癒しの魔女、アリア。
その名は、永遠の詩となった。
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