なぜ投稿してもまったく読まれないのかについての個人的な考え

高田正人

第1話




 最高の傑作が書けたかも、と自分で作品の完成を祝い――


 投稿すればきっとたくさんの★と♥が付くと期待し――


 感想になんて答えようか、レビューにどんな返信をしようかとついつい先走って考え――


 震える手で投稿をする――



 30分後。1時間後。2時間後。3時間後。

 半日後、一日後。三日後。

 PVの状況は「無風」。

 読者数が増えない。増えたとしても最初の1話だけ。

 ★も♥も何一つつかない。

 感想やレビューなど夢のまた夢。



 それなのに。

 カクヨムのトップに行けば、自分とは比べ物にならない数の★と♥にいろどられた作品が出迎える。


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 どれもこれもケタが違いすぎて、月とスッポンという言葉が思い浮かぶ。


 いったい自分の何がだめなのか。

 自分の作品のどこが間違っているのか。

 何が足りなかったのだろう。

 何をすればよかったのだろう。



 なぜ、自分の作品はこんなにも読まれないのだろう?




 きっと誰もが、このような体験をしたことがあると思います。

 確かに、一つ作品を完成して投稿したら、何かしら改善する点は見つかるかもしれません。

 でも、今回は創作論という形で、少しだけ考えてみたいと思います。


 なぜ、自分の作品はまったく読まれないのだろう。

 その大きな理由の一つとして考えられるのは、これではないでしょうか?



 《同時に投稿されるたくさんの作品に埋もれてしまう》




 例えるならば、こんな感じです。

 場所は夏祭りの神社。

 私たちは屋台を構え、そこで食べ物を売ろうとしています。

 ラーメンでもいいですし、焼き鳥でもいいですし、お好み焼きでもいいです。

 とにかく、丁寧に作ってお客さんのことを考えておいしく作った自信作です。


 しかし。

 お客さんは神社の入り口から入り、参道にずらりと並んだ屋台を見ていきます。

 ここで問題があります。

 肝心の私たちの屋台にお客さんがたどり着く前に、別の屋台が100軒あったらどうでしょうか?

 しかも、屋台の入り口の一番目立つところに、特別にライトアップされた大きな屋台が並んでいます。


 大半のお客さんは、究極の美食を求めてはいません。

 小腹をちょっと満たせる、おいしくてお財布に優しいものが欲しいでしょう。

 大きな屋台を通り過ぎ、100軒の屋台を横目に、私たちの屋台にまでたどり着くお客さんがどれだけいるでしょうか?


 もし、お客さんの注文がないとしても。

 私たちの屋台で作った食べ物の味付けが悪いからではありません。

 私たちのところにたどり着く前に、みんなが食欲を満たしてしまう位置なのです。



 何が言いたいかというと「自作が読まれないからといって、どうか自分を責めないでください」ということです。

 あえて言います。

 ちっとも悪くはないのです。

 読者を楽しませようと心を砕き、魅力的なキャラクターと楽しいストーリーを提供し、作品を作り上げたのですから。


 努力が足りない。

 改善が足りない。

 熱意が足りない。

 リサーチが足りない。

 才能が足りない。


 そんな数だけの世迷い事風情。

 何様のつもりで作者のしてきた積み重ねにつまらない小言を申しているのやら。


 読まれなかった理由は「根性」でもなければ「努力」でもありません。

 まして「才能」などでは断じてありません。


 剣術と同じです。

 剣とは即ち凡人をして達人を殺害せしめるための技法であり、才能の介在しない術こそ合理の結晶なのです。


 才能などなくても、何一つ問題などありません。



 読まれなかったこと。それは単純な物理的な問題です。

 投稿した時に同時にたくさんの別の作品が投稿されます。

 読者の求める数よりもはるかに、はるかに多く。

 物理的に、それらに隠され、埋もれてしまっただけなのでしょう。



 そもそも。

 いくつかの創作についてのエッセイを読むと、最初からPVがガンガン伸びて★と♥が大量についた、という話はあまり見たことがありません。

 それは自慢になってしまうので書いてないだけかもしれませんが。

 最初はまったく伸びず、何かをきっかけに急に伸び始めた、という話をいくつか読んだことがあります。

 その「きっかけ」が何なのかは、知りたいですよね。



 多くのカクヨムの創作論で、「毎日投稿する」ことは重要視されています。

 それは「なるべくたくさんの人の目に留まる」ことを目的としているからでしょう。


 私たちにできることは限られています。

 私たちは、自分に書けるものしか書けません。

 自作と同時に投稿されたたくさんの作品を、消し去ることは不可能です。

 人気や賞賛は、得ようと思って得られるものではありません。

 この創作論も、結局「じゃあどうすれば埋もれずに読まれるのだろう?」という疑問には答えられません。

 作者が知らないからです。

 (おそらくこう思う方も多いでしょう。「いくら読者の目に触れる機会が増えても、人気のジャンルじゃないと読まれませんが?」と) 


 ◆


 ただ、もう一度言いたいのはこれです。


「自作が読まれないからといって、どうか自分を責めないでください」


 努力が足りなかったり、改善が足りなかったわけではないのです。

 物理的な問題として、読者の需要より書き手の供給の方が圧倒的に多いのでしょう。

 

 このたいしたことが何一つ書いていない創作論が。

 作品を作っている書き手の方の「がっかり」を少しだけ和らげることができたら幸いです。


 こう言って笑えたら嬉しいです。


「今回が最後のチャンスじゃない。ガチャと同じで回せば当たることはある」


 と。




 お互いがんばりましょう!


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