車窓
熟し過ぎてしまった感情。
世界は灰色。
「悲しいわけが思い出せない」
急かされているような気分に落ち着くことすらままならない。
「どうせ、どこへ向かうべきかも知らないんだ」
目まぐるしい。
はやく楽になりたい。
電車に揺られ、足元だけを見る。
人が怖い。
そう思ったのはもうかなり昔のこと。
電車にさえ乗っていたくない。
移動する箱に閉じ込められているそう思うだけで呼吸さえもままならない。
視線が怖い。
逃げ場がない。
だから、あの街から出るために仕方なかった。
どこだっていい。
ただ、人のいない場所であれば。
そんな場所はないとわかっていながら目指す。
海の広がる駅
花畑の広がる駅
水に街の沈んだ駅
色んな駅を眺めては焦燥感を覚えた。
誰もたどり着くことのない無人の場所。
ありもしない場所を求めている。
「心がなければ、と思った」
何度も何度も。
そして、震える手を見ては情けなさに涙した。
青いのだろう、海は。
カラフルなのだ、花々とは、きっと。
寂しい色をしているんだろうけれど。
視界に映るのはいつだってモノクロ。
「欠陥品なのか?」
自分自身は。
そう思うと惨めな気持ちになって。
誰かになれたのなら。
普通になれたのならば。
代替のきく人間でもいい、そうなりたかった。
世の中は謳う、生産性のある人間になれ。
その言葉に呪われた。
蝕みやがて、不調になった。
数年前のことだ。
特に何があったわけじゃない。
一度壊れたガラスは接着剤で継ぎはぎ直しても完全な元通りの状態になれやしない。うっかりガラスを落としたようなものだ、と思った。
一度、破損し始めた心。
綺麗に綺麗に、継ぎはぎ直した。
「駄目だったけど⋯⋯」
何か明確かつ決定的なきっかけがあったわけじゃない。最初からヒビは入っていたらしい、いわゆる欠陥品、初期不良。
夢の中で探し続けている未知の誰もたどり着くことのできない、誰もいない場所。
いつかたどり着くその日を祈り。
電車に乗り続けている。
海に沈んだ駅
今まで停まることのなかった電車が止まった。
降りるべきか。
このまま乗ったまま、じっとしているべきか。
ひたすら、悩んでいる。
モノクロの世界に青だけが色づいている。
かれこれずっと停車している。
プラットホームに降りるべきだろうか?
四季患い(仮) はすみらいと @hasumiwrite
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