Web小説のおはなし
中の人(カクヨムのすがた)
Web小説ってどの話もあんこたっぷりだよね
この文章を書くにあたり、迷いました。
これってジャンル的に「創作論・評論」じゃないか? って。
しかしそこまでかしこまったこと書くわけじゃないです。
なんか書きたくなったから書いてるので、エッセイでいいかなって。
虚構は交えてないからカテエラ(カテゴリーエラー)じゃないでしょう。
さて、このお話は割と「近況ノートで書いたことの焼き直し」になります。
最近、「紙小説と電子書籍の違い」について考察されている方がいました。
ここはカクヨムです、電子書籍と言ってよいでしょう。
Webブラウザでカクヨムを見ると分かるのですが、タイトルバーには「無料で小説を書ける、読める、伝えられる - カクヨム」とあるんですね、つまりカクヨムは小説サイトです、まぁ何当たり前の事言ってるんだと思う人もいるでしょう。
ですが、私は思うのです。
カクヨムで言われている「小説」と本屋で買う紙書籍としての「小説」は決定的に違うと。それはどっちが優れてるの劣ってるのではなく、両者は恐らく劇的に別物であろうと思うのです、それをこれから書いていこうと思います。
結論から書いちゃうと「Web小説は基本連載中なことが多い」です。
例えばランキングを見ると一目瞭然です。
一番人気なジャンルは異世界ファンタジーですので、それで見てみましょう。
累計ランキングがいいですね。
そうするとトップ20作品が1ページ目に表示されます。
そして20作品の内、実に19作品が「連載中」なのです。
そう、カクヨムの大体の小説は「連載中」なのです。
全ての小説は「完結済」であろう紙書籍との大きな差はこれです。
いや、続き物の小説ってのもありますが、「本」としての区切りはついています。
対してWeb小説は概ね3000文字くらいの「一話」単位で書かれ、連載中です。
ランキング上位陣の小説は大抵、話が途中なのです。
おかしな話です。
カクヨムは「誰も結末を知らない小説」がランキング上位を占めてるのです。
本屋で最後まで読まれない小説がランキング上位を占めることがあるでしょうか?
いいえ、ありません。むしろ未完の小説はそもそも出版されないでしょう。
ですが、この「カクヨム的ランキング」が適用される紙書籍があります。
週刊連載型の漫画です。
週刊少年ジャンプとかいい例ですね、掲載されている全ての作品は「未完」です。
ワンピースとか(作者の尾田栄一郎先生以外は)誰も結末を知らないでしょう。
連載中の話は全て、途中の話が最新話です。
しかし熾烈なランキング争いがあり、多数の読者が読んでいます。
そう、Web小説は、小説というより週刊連載漫画に近いのです。
ですので、求められる文法も「小説」より「連載漫画」に近いものになります。
それゆえに消費スタイルも連載漫画に近い形になります。
Web小説は「切られる」のが当たり前です。
深夜アニメと同じですね、「三話切り」とかあるじゃないですか、アレ。
カクヨムで小説を書かれている方はご存じでしょうが、カクヨムでは各話ごとに何人が読んだか作者からは一目瞭然になっています、例えば一話で100人が見ていた小説が二話目で一気に10人、三話目で1人に激減し、四話目以降は誰も見ない。
こういう話、割と多いんです。作者の皆さん裏で血の涙を流してるんですよ。
これ、既存の小説ではあまり考えられないと思います。買ってきたからには目の前に「最後までひととおりページが揃った小説」が書籍としてあるのです、一度買ってもらえたからにはほとんどのケースにおいて最後まで読んでもらえるでしょう。
そうすると、カクヨムの上位陣の作家は「生き残る」ための戦略を取ります。
週刊連載漫画と同じロジックになるのです。
常時面白く、絶え間なく提供し、終わらない。
一度掴んだ読者は数百万文字を費やしても離さない。
これこそがカクヨムトップランカーの秘訣だと思います。
裏を返すと、カクヨムで小説を読む方はほとんどが「そういう小説しか読んでいない」ことになります、読まれるからこそトップランカーなのです、PVは正直です、嘘をつきません。皆さんはそういう小説を好んでいるのです。
ですが思うのです、じゃあランキング下位どころかランクインすらしない小説。つまり誰も読んでいない作品って面白くないのか? って、そんな事はないと思うのです。単に「Web小説の文法」に則ってないだけの面白い小説、あると思います。
小説には緩急というものがあると思うのです。
中には序盤はどうしても面白みのブーストが足りない。
そういう小説、あると思います。
しかしそれでも「通し」で読むと面白い小説、あると思うんです。
今(これを執筆しているのは2025年9月です)は秋です。
秋と言えば読書の秋です。
皆さんも、一度小説を、完結済の小説を「通し」で読んでみましょう。
試しに「三話切り」をせず、最後まで作者と付き合ってみましょう。
多分得られるものが、あると思うのです。
<了>
Web小説のおはなし 中の人(カクヨムのすがた) @NakanoHito_55
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