第4話 ほんたうのにんげん

 人造人間桜田ペニオが長い夢から目覚めた時、彼は培養槽の中から世界を眺めていた。緑がかった液体の向こうには、一人の醜い男が立っている。

「なんと、目を覚ましたか。我が息子よ」

 男はそのように口を動かした。ペニオは混乱した。どうして自分はまた培養槽の中にいるのか。

「また? 何を言っているのかね。君はずっと、その中にいるよ」

 思考はこの液体を通して、彼に筒抜けのようであった。

「夢を見ていたのか、致し方ない。三十年分の時をダイジェストで進めなければならなかったからな。脳にも相応の刺激が行ってしかるべきか」

 夢? 夢か。おかしな夢だった。嘘を吐くたびに陰茎が伸びるだなんて。

「そうか、それは随分苦労しただろう。ならば諸悪の根源であるその男根には未練もないだろうね」

 偽りの夢から目覚めた桜田ペニオは手術台の上に寝かされた。

「嫌な夢を見せてしまって悪かったね。でも安心したまえ。君は私の股間で再びムスコとして生まれ変わるのだよ」

 こうして、人造人間桜田ペニオは、念願であった本当の人間になったのだった。

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人造人間ペニオの冒険 美崎あらた @misaki_arata

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