君の声が聴きたくて

プールでの楽しい時間が終わり、私たちはいつものように帰り道を歩いていた。夕陽が私たちの影を長く引き延ばし、秋のそよ風が頬を優しく撫でる。

「悠真ちゃん、今日は本当に楽しかったね」

私は思わずそう口にした。声にはまだプールでの高揚感が残っていた。

「うん、僕も」

悠真ちゃんは微笑んで答えた。夕陽に照らされた横顔はとても優しく見えた。

「ひなたと一緒の時間は、いつも特別だね」

私たちはそんな風に雑談しながら、いつものカフェに着いた。ドアを開けると、いつものようにコーヒーの香りと柔らかなピアノの旋律が迎えてくれる。

「いらっしゃいませ」

店員さんの挨拶に、私たちはいつもの窓際の席に向かった。

「おすすめは新しいラテですよ」

店員さんの提案に、悠真ちゃんは「じゃあそれにします」と微笑んだ。私はいつものミルクティーを注文した。

飲み物が運ばれてくる間、私は悠真ちゃんの横顔を盗み見た。彼女は窓の外の街並みを見つめていて、夕陽に照らされた輪郭がとても柔らかく見えた。

「何を見てるの？」

私は思わず尋ねた。

悠真ちゃんは振り向いて、私に温かい微笑みを向けた。

「別に。ただ、こんな風に穏やかな日々が続けばいいなって思ってた」

「うん」

私は力強く頷いた。胸の中に、言わなければならない気持ちがじわじわと膨らんでいた。

店員さんがドリンクを運んできたのを機に、私は深呼吸をして、テーブルの上のメニューを置いた。

「悠真ちゃん」

私は彼女の目を真っ直ぐ見つめた。「話があるの」

悠真ちゃんは少し驚いた表情を浮かべながらも、飲んでいたカップをそっと置いた。

「どうしたの？ひなた」

「実はね...」

私は一度言葉を切り、高鳴る胸を抑えるように深呼吸した。

「この間のプールから、ずっと考えてたんだ。悠真ちゃんと過ごす毎日が、本当に楽しくて。図書室で再会して、僕たちの過去を知って、それから...今までのすべてが」

悠真ちゃんは静かに私の話を聞いていて、その瞳はとても優しく、真剣だった。

「私...悠真ちゃんのことが好きなの」

私は勇気を振り絞って言った。声が少し震えていたかもしれない。

一瞬、カフェ全体が静まり返ったように感じた。悠真ちゃんの目が大きく開かれ、驚いた表情を浮かべた。

「え...？」

私は俯いてしまいそうになるのを必死に堪えながら、続けた。

「図書室で会った時から、ずっと惹かれてた。でも、それが恋だなんて思わなかった。でも、プールで一緒に過ごして、悠真ちゃんのことをもっと知って...」

私の声は震えていた。でも、言葉を止めることはできなかった。

「悠真ちゃんが、本当は女の子だって知った時、最初は驚いた。でも、それ以上に嬉しかった。だって、表向きは男の子みたいに見えても、中身がとても優しくて、強い人だってことがわかったから」

私は涙が出そうになるのを必死にこらえながら、悠真ちゃんの手をそっと握った。

「私は、悠真ちゃんの外見じゃなくて、中身が好きなの。悠真ちゃんが悠真ちゃんでいられること、それが一番大事なの。だから...付き合ってほしい」

最後の言葉を言い終えると、私は悠真ちゃんの目を見つめた。彼女の瞳には、大きな驚きと、そして何か温かいものが浮かんでいた。

数秒の沈黙の後、悠真ちゃんはぽつりと呟いた。

「ひなた...」

その声は、とても優しく震えていた。

「僕も...ひなたのことが好きだよ。ずっと好きだった。図書室で会った時から、心の奥底で何かが変わっていくのを感じてた。でも、自分に自信がなくて...」

悠真ちゃんは、涙を浮かべながら微笑んだ。

「でも、ひなたが僕のことをそういう風に見てくれて、嬉しい。本当に嬉しいよ」

私たちはそっと手を取り合った。カフェの窓から差し込む夕陽が、私たちの手を柔らかく照らしていた。

「これからも...ずっと一緒にいよう」

私は小さな声で呟いた。

「うん」

悠真ちゃんは頷きながら、私の手をギュッと握り返した。

その日、私たちはカフェで長い時間を過ごした。何も話さなくても、ただ隣にいるだけで、心が満たされるような気がした。

私の恋人は、外見は男の子のようだけど、中身はとても優しくて、強い女の子。そして、私はその彼女が、本当に大好きだった。

「私の恋人は、本当に素敵だね」

私は心の中でそう思いながら、彼女の手をギュッと握った。