囚われた吸血鬼の檻に咲く、絶望と救いの薔薇
- ★★★ Excellent!!!
『ルシフェル・ヴァンパイア ~囚われの吸血鬼は伯爵家長男に執着される~に漂う美しさと残酷さ』、タイトルの印象を裏切らず、単なる耽美な吸血鬼物語の枠を越えた、心に刺さる“救済”の物語です。
19世紀ヨーロッパの重厚な闇と残酷さ、そして華やかな社交界の陰に沈むステリアの孤独。その絶望の檻に、名門貴族の長男アシュレイが差し伸べる手は、私たち読み手の心にも静かに火を灯します。美と力を持ちながら虐げられた吸血鬼と、未熟でありながらも真っ直ぐな優しさを持つ青年の出会いは、やがて互いの心を震わせ、世界の「当たり前」を揺るがしていきます。
檻越しの会話、危うい脱出劇、そして愛と信頼が交錯する夜――ページをめくるたびに、緊張感と切なさが胸を締め付け、やがて訪れる救いの光に涙しそうになります。「本当の怪物」とは何か、「自由」とは何か。
抑えきれない情感と妖艶な美しさが同居したこの物語、美しさと痛み、そしてかすかな希望が見え隠れし、きっとあなたの心にも深く響くはず。現実と幻想、痛々しさと優しさの交錯する世界へ、ぜひ足を踏み入れてみてくださいね。