第五章 少女の生きる道
第27話 想い
──バァン! バァン! バァン!
アジトに設えられている防音室に銃声が響く。僕は凜々花と共に銃撃の訓練をしている。
「そう、その小さいスコープを使うんだ。そうしたら命中率が格段に上がる」
「……こう?」
──バァン!
「やった‼」
「お見事だよベイビー! 真ん中に命中したじゃないか! センスあるよ! 少なくとも僕は最初の内は的を外す事も多かったからね」
二人きりの特訓は何となくむず痒い。凜々花の笑顔を守りたいという庇護欲が強い一方で、凜々花を滅茶苦茶にしてしまいたいという欲望にも駆られるからだ。
僕はロリコンじゃなかったはずなのに。
凜々花は十四歳だけど、見た目的にはもっと下の年齢に見える。そんな、幼い子供みたいな凜々花にこんな欲情を抱くのはもはや犯罪だ。
「……ねぇ! ねぇ! ピュア!」
「……え!?」
凜々花は口を尖らせて頬を膨らませて僕を上目遣いに睨んでいる。
「だーかーらー! 次は筋トレするのかって聞いてるの!」
「あ……あぁ。そうだね。銃のトレーニングはこれくらいにして、筋トレしようか」
僕は凜々花と並んで寝転び、足上げ腹筋からトレーニングを始める。
凜々花は博士から借りたハーフパンツを履いているんだけど、そこから見える生足が妙に艶めかしくて僕の欲情をさらに煽る。
もうこれは、博士に相談した方が良い案件かもしれない……。
──ドガッ!
僕が煩悩にまみれていると、防音室のドアが荒々しく開けられた。
「おい、ピュア、ベイビー。仮のスケジュールだが、神明襲撃は来月の十月二十日の早朝に決まったぞ! まだ神明は見付かってねぇけどよ、とりあえずスケジュールだけ組んじまったぜ。ぐはははは!」
「十月二十日……」
「何だピュア。その日予定でもあったのか?」
「いや……その……その日、僕の十八歳の誕生日なんです」
「ピュアの誕生日!?」
凜々花は目をキラキラさせて僕を見上げる。
「ピュアの誕生日って十月二十日なのね! 嬉しい。偶然とはいえピュアの誕生日を知っちゃった……うふふ……」
「ベイビー、浮かれるのは神明を倒してからにしろよ。うかうかしてると殺られるぞ」
「もちろん分かってるわ、ボス」
僕は少し動揺した。僕はその日に成人するけど、成人男性が幼女みたいな中学二年生に欲情したらただの変態じゃないか。
「あと一ヶ月しか猶予が無い。それまでに銃の腕前は完璧にしろ。普通の銃だけじゃなく、マシンガンの訓練もしておけよ。後でベイビー用にカスタマイズしたやつを博士が持って来てくれるからよ。それと、ターボシューズでの浮遊戦も出来るようにしておけよな。神明についている複数のボディーガードを倒すにはあいつらをかく乱するしかねぇ」
「分かりました、ボス」
「フィジカルの強いピュアは良いとして、ベイビーにはタンパク質たっぷりのサプリメントを発注しておいたからよ。栄養面は任せろ」
「ありがとうございます、ボス」
「何でピュア、お前が礼を言う?」
「いや……その……」
「ま、お前はベイビーの親みたいなもんだからな。ん? 親っていうか、恋人か?」
「そ、そんな……!」
「ぐはははは、冗談だよ。お前とベイビーじゃ犯罪だぜ」
後ろで凜々花が「犯罪でも良いもん」と呟いたのが聞こえた。いや、良くないよ……。って僕はもう犯罪者なのか……。でも、凜々花を恋人にするっていうのは倫理的にどうなの!? それもこれも人殺しの僕が言っても何も説得力がないんだけど。
「じゃ、頑張れよ。一日四回のサプリメントは忘れずに飲めよ」
「「はい!」」
ボスが防音室から出て行くと、凜々花は僕を見つめてこんな事を切り出した。
「ねぇ……ピュア……」
「何?」
「もし……もしもよ、もしも神明を無事に倒して、皆で無事にここに帰る事が出来たら……」
「出来たら……?」
「……わたしをピュアのお嫁さんにしてくれない?」
「ぶふぅっ!?」
何!? 何だって!? 凜々花を僕のお嫁さんにって、君まだ十四歳の中学二年生だよね!? 結婚可能年齢は成人になってからだよ!?
「えぇ……!? だって、ベイビーはまだ子供で……その……」
「だから、籍を入れるのは成人になってからって事で。婚約……そう! 婚約して!」
「……婚約……」
「わたしを女にしたいならいつでもして良いから!」
「わふぅっ!?」
どうしよう。凜々花を見ると僕の欲情が煽られるのは本当だし、何ならいっそ滅茶苦茶にしてやりたいとか鬼畜じみた事を考えてしまうのだけど、いざ本人から迫られるとたじろいでしまう。だって、今凜々花を抱いたら最悪未成年淫行罪で逮捕されるよ! 法律的にはかなりのグレーゾーンなんだけどさ!
「べ、ベイビー……」
「こんな時は名前で呼んで欲しい」
「それはそうだけど、その、アジトであっても本名で呼び合うとボスにどちゃくそ怒られるんだよね」
「そうなの? そうよね……」
「で、ベイビー」
「うん?」
「大人になるのを急がなくて良いよ。その……君は今でも愛らしくて……その……僕は……あの……」
「うん?」
「えーと……だから……あの……」
「うん!?」
「その……だから……」
「頑張ってピュア!」
「……待ってるから!」
「!?」
「君が、大人になるのを待つから。ベイビーが成人したら、婚約でも何でもするし、君を女にでもする。結婚したって良い。だから、今は焦らないで、子供の時間を大切にして欲しい」
「ありがとう……! 嬉しい! でも……わたしは子供である自分を捨てなきゃ」
「え?」
「子供のままでいたら、神明を倒せないわ。人なんて殺せない。だから、今すぐに心だけでも大人になるの」
「あ……」
「ピュアがわたしをこの組織に入れてくれた事、とても感謝してる。わたしは家族を失ったけど、新しい仲間を手に入れられた。ピュアっていう大好きな人も傍にいてくれるし。だからね、わたしとピュアは、今は心だけの婚約で、わたしが成人したら本当の旦那様になってよね」
「……うん。良いよ……」
「大好き! ピュア!」
そう言うと、凜々花は僕の首に飛び付いて来た。つま先はギリギリまで伸ばしている。そして僕も自然にちょっとしゃがんでいる。
僕は、いけないと思いながらも両腕をそっと凜々花の背中に回す。
「……凜々花……」
いけないと思っても、ついにその名前が口から洩れてしまう。そして、いけないと思っていても凜々花の形の良い唇に僕のそれを重ねようと──。
──ギィィィ!
「ピュア、ベイビーのマシンガン持って来ましたよ! ……ん!?」
「……あ……」
扉を開けたのは博士だった。そう言えば、後で博士が持って来てくれるってさっきボスが言っていた。すっかり忘れてた……。
「……ロリコン……」
博士が久々に例の凍った様な視線で僕を見つめ、ボソッと一言漏らす。
違います、博士。ちょっと誤解です……。でも、半分当たっているかもしれません。それと、キスは未遂で終わりました。ある意味ありがとうございます。
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