第41話:第一章

 あれから数週間の時がすぎて、生活は少し変わった。

 ネットやテレビは線香花火が燃え尽きる瞬間のように連日のニュースで賑わうが、正直なところ目新しいセンセーショナルなニュースにも飽きてきたところだ。


 電子媒体で残すよりかはマシだと思って、色々な知識を手当たり次第に複数台のコピー機で印刷させ続けているが、それもあまり耐用年数は多くないだろう。


「……ずっとガシャガシャ動いていてムードがないです」

「仕方ないだろ……。特に一次産業のデータは確保しとかないと詰みかねないし、それに伴って原始的な保存方法や各種日用品の作り方も必須だ」


 パジャマ姿のクイナが部屋のサイズの割に大きすぎるダブルベッドの上でゴロゴロと転がって文句を言う。


「図書館とかは他の人にも狙われるだろうし、こうして情報を集めるのが最適解だ」

「それは分かりますけど……」

「それに、一度崩壊はしても十数年もすれば元に戻り始めるだろうけどな」

「それよりも、アレはたくさん買い貯めておいた方がいいのではないでしょうか?」

「アレ?」

「……私に言わせようとしてます? 変態」

「ええ……あー、あれか。ポテトチップス」

「違います。……おぼこぶらないでください。まったく……」


 いや、まぁ分かるけども……こう堂々と真面目な顔をしては話にくいというか……めちゃくちゃ買い貯めしたのを自警団の奴らに見つかったら恥ずかしいし、真中にバレたら怒られそうだ。


「真面目な話をするなら、深見さんはどうなったんですかね。能力を失って」

「まぁ……すぐにどうこうってことはないだろうけど、徐々にボロが出るだろうな」

「徐々に……ですか? 弱くなったなら急にぐわーってやられるんじゃないです?」

「人心掌握は本物だし、弱くなっても裏切られたりはしないさ。クイナも俺が弱くなっても倒したりはしないだろ?」

「えっ、しますけど。いつも我慢させられてるので、押し倒して好き放題しますよ」

「……。まぁ、普通に尊敬はされているだろうからすぐに潰れたりはしないだろうけど……。その尊敬は強さありきだ。と言うのも、好き放題出来る力があるのにそうではなく別のことをするというのに、人は理由を求めたがるし、勝手に想像を膨らませて高尚な考えがあると思い込む」


 クイナはベッドの上で俺を待つように足をパタパタと動かしながら首を傾げる。


「あー、ヤクさんもなんかそんな感じで孤高ぶってましたもんね。スポーツと勉強が出来る内気な人はクールキャラに見える理論です。実態はただのロリコンなのに」

「ロリコンじゃないが」

「まぁ、キリちゃんとかソラちゃんには特別なアレはなさそうなので……いや、まぁそれでもダメな人ですけどね。……知ってます? 子供に誘惑されても手を出したらダメなんですよ?」

「お前が……お前が言うな……! まぁ……俺がしょうもないやつとバレたのと同じように、深見のカリスマも剥がれると思うぞ」


 評価というのは、基本的に常に間違えているものだ。

 特に人が人に下すものは正確であることはありえないとすら言える。


 有名人が別分野に挑戦すれば実態はどうであれ高く評価されるし、あるいは人によっては過剰に低く評価されるだろう。

 前情報がなくとも好みと良さを分けて語ることも難しい。


 俺からすると今もベッドの上で猫みたいに丸まっているクイナは世界一可愛い女の子だが、まぁ世間的にはただのクソガキなのだろうとも思う。


「まぁ、もう深見がいてもいなくてもどうしようもないけどな。……総理ももう辞めたみたいだし」

「次あったら労ってあげましょうね」

「そうだな。……あ、飲み物ない」

「コンビニ行きます?」

「空いてるかなぁ、最近だいぶ不定期なんだよな」

「物流が死んでるせいで、最近店長のお母さん手作りのミサンガが並んでましたね。新色見たいので行きましょう」

「言うほどミサンガの新作気になるか?」


 俺の部屋なのに着替えるからとクイナに追い出される。

 さっきまで一緒に風呂に入りたがっていたのに、着替えを見られるのは嫌なのは何なのだろうか。


 服を着たり脱いだりするところだけは絶対に見せないようにしている。


 しばらくして、モコモコとした服に身を包んだクイナが出てきて、二人で外に出る。


「そう言えば、キリちゃんクビになったそうですよ」

「あー、師匠の責任とってか?」

「いや、新組織は未成年を戦わせない方向性らしくて」

「真っ当な理由だ……」

「行くところあんまりないみたいなのでウチに来るかもです」

「ああ、そうなんだ。……なんか捨て猫みたいだな」


 俺とクイナが歩いていると、橋の下に何か段ボールがあることと、その段ボールが動いていることに気がつく。


「あれ? もしかしてアレ動物捨てられてません?」

「あー、世も世だし、特にここは物流が終わってるから引っ越そうとして、飼えなくて捨てたのかも……」

「み、見に行きません? 猫かもですよ!? 猫なら飼いません!?」

「いや……大人しく箱の中にいるなら犬じゃないか?」

「犬かぁ……んん……まぁ犬なら拝島さんに押し付けましょう。ギャルなら犬派でしょう」

「何だその偏見……」


 と言いながらクイナと二人で橋の下に降りる。


「猫ちゃん猫ちゅわぁーん」

「テンションの上げ方がキモいな……」


 と言いながら段ボールを見る。

 全身がテカテカした黒色で、首元と前方の胸元は白く、その白の上に黄色と藍色の縞々がある。首と顔に毛はなく、頭は白い毛が混じった黒色。


「……」

「……」


 その生き物と目が合ってしまう。


「……総理だ」


 総理だった。


「……ヤクさん。猫や犬ならお世話するつもりでしたが、総理の場合、お世話しなければ差別になると思います?」

「……ならないんじゃないか?」


 総理が……橋の下に捨てられていた。






──────




第一章はここまでとなります。

ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました!


第二章以降は、現在プロットが途中までのため、構想をしっかり練り直してから続きを執筆していく予定です。

そのため、本作は一時的に「完結」扱いとさせていただきます。


今後は新作の執筆も予定しておりますので、よろしければ作者フォローをしていただき、新作も読んでいただけますと幸いです。


また、コメントやレビューもありがとうございました!

とても励みになっています。


今後とも、どうぞよろしくお願いします!


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『私で童貞捨てたくせに』主人公パーティのクソガキに脅されて、世界最強の俺がラスボス討伐に巻き込まれた件 ウサギ様 @bokukkozuki

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