すきとおる、四季

夜賀千速

揺れるブランコ

イヤホンのなかのせかいで恋をしていつかふたりで春になろうね


夢なんて言葉を笑顔でつかうからわたしは火傷あなたは炎


飛び出した純度のままの言葉とか温度できみを夏にえがいて


そのままのこころを透写したいから綺麗な言葉ばかりは辞めた


思い出の純度が恋のようだからふとしたときにこぼれてしまう


花びらの散らない校章引き留めてかつての第二ボタンに触れる


しにたい、はほんものだけどお守りでお守りだけど踏み付けた


しにたいが綺麗に言えて日が暮れて大人になんてならなくていい


好きだけど三時にいいねしないでねおやすみなさい苦しまないで


うつくしい世界を知って歩いてたあなたに見せたい光ばかりで


夏空の枕詞は君だったなんもなくても光ると知って


恋すれば奥歯の痛む日曜の小窓見上げる初夏の隅


落ちていく言葉や季節が過去になり全部あなたが掬ってくれた


高架橋抜けて差す陽が頬にありあなたのような瞬きひとつ


橙が暗く、暗くと染まりゆく中で煌めく 1st star


紺碧のあなたのシュシュに散らついたスパンコールのような惑星


降る雨は巡りて芝生と落ち合わせ海のつめたさ空へと還す


愛よりも青が正義だ、だってほら空とか海とかよく見てみなよ


ああそれは、水族館の色ですね。わたしは海の色より好きです。


星が降りきみの浴衣の青いとこだけが宇宙に溶けだしている


凍てついたブルーハワイの舌をみて笑ってくれるあなたがいない


この星もあの星だって今は亡き星かもしれないひかりと過去よ


ああそれもままらないのは君のせい心臓音はブルーノートで


伸びすぎた爪の綻ぶ憂鬱と恋は僕らの生活だった


忘れてない忘れてないよ苦しいし、きみが苦しくさせたのでしょう


うつくしいあなたを知った凪だった高校二年の夏だった


唇の色を変えたの夕暮れと夜の間際みたいな茜


好きだけが永遠と言うきみに似る言葉がないの夏が終わるね


感性の届くところにきみがいて夏の終わりも死にたくなかった

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すきとおる、四季 夜賀千速 @ChihayaYoruga39

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