第3話 吸い殻

今や、信一郎と幸恵は、ボロアパートに、二人暮らし。老いた二人は、居間で、煙草を吸う。

根元まで吸う二人。吸い終わると灰皿でもみ消す。

もはや、吸い殻にまで、頭を下げる二人だった。

「楽しみと言ったら、ご飯と煙草くらいだね。」

幸恵は、しみじみ言う。信一郎はうなずく。

「今頃、王子様は、みんなのために頭を下げていると思うわ。自分の事も憎んでいる相手にも頭を下げるのが、社会の礼儀。しんどい思いをしているのじゃないのかな。」

「王子様が、家に来たら、俺は、本音や愚痴を聞いてやろう。」

「わたしは、美味しい料理を作ってやるわ。」

親は、何時まで経っても親である。


世の中は、優等生になるところではない。みんなに頭を下げるところである。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

吸い殻 トシキ障害者文人 @freeinlife

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ