第2話 幸せというもの
信一郎の仕事は酒の卸業だった。同僚はライバル。いかに、取引先の店にもごり込むか。店員に頭を下げる信一郎。我が家の王子様のために、頑張らなくては。
週末は、場末の酒場で、安酒をあおり、焼き鳥と刺身をつつく。おかみさんに悩みを打ち明ける。そして泥酔して眠りこける。現実の厳しさと悲しみに屈しなくてはならない信一郎だった。
上流階級の反対には、下流階級が存在する。人間は、人に、頭を下げれば下げるほど、勝利する。天狗の鼻をへし折り、プライドをかなぐり捨て、頭を下げる。
ムカついて、怒って切れて、事態が済むのは30歳まで。
自分の武勇伝をひけらかして、通用するのは40歳まで。
夢に向かって頑張っていますなんて、人に、言いふらす者は、心幼き者。
そんな彼らの下僕にも、信一郎は、ならなくてはならない。
もちろん、仕事で突きつけられるクレーマーにも頭を下げる。
「僕らは、幸せになりたいんだ!」
信一郎は、自分に言い聞かせる。
二人の王子さまは、すくすく育った。やがて、成人した彼は、社会に頭を下げることを覚える。大人になったのだ。彼は、自立して家を出る。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます