感性の衰弱と精神の老化 【エッセイ】
私が最も恐れるもの。
ああそれは、意識が戻り手元にある手のひらほどの電子端末の画面を眺めるあの一時だ。
画面の至る所に映し出される、視覚を刺激するよう設計されたアイコン。それらを惰性で叩き、目的無く流れて来る情報を眺める。
誰かに命令されたわけでもなく繰り返す無益な行為。情報の海で彷徨い続け、知らぬ間に疲労していく脳みそ。
そんな日々を数年と繰り返すと、かつてはあった心躍る感性は、弱く鈍く萎え衰弱した。そして、精神は老化し隠者ように外との関わり合いを避けて内に籠るようになった。
感性の衰弱と精神の老化は、受け身でいつづけた者の辿る恐ろしい道だ。この道を進めば、人々が魅力されるモノの輝きすら、強い日差しを反射した鉄やアルミ、生活のどこにでも存在するモノの輝きと大差ないものとして受け取ってしまう。
あらゆるものに対して興味、共感、感動、など心動かされることが無くなり、面白みのない人生を歩み始める。
それは、悲惨な勘違を生み出す。自分の人生なんてものは、もともと面白みのない人生であると。
日の終り、面白みのない人生に
電子端末を手元に置いて、静かに意識が消えていく。
ほんの少し怖い奇妙なお話 2025年夏休み短編企画 明知宏治 @Sophokles
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