エンドレス・ティータイム

 出られない。喫茶店から、出られない!

「もう~! たしかに、あなたがテスト勉強してないっていうから、教えてあげるっていったけど!」

「怒るなよ。ここの珈琲代、出すからさ~」

「それはありがたいけど……ここまで課題をしていないなんて聞いてないよ。これじゃあ、課題やっただけで、もうテスト当日になっちゃうよ?」

 幼なじみの彼は、勉強が苦手。それは、小学生のころから、知っていた。だから、いっつもテスト前は、わたしが勉強を教える。これが、わたしたちの日常といっても

過言じゃない。こんなのは慣れっこだし、わたしも復習になっていいことだと思っている。

 いや、思っていた。

 まさか、高校生になっても、これが続くなんて!

 今回の中間テストの範囲は広い。しかも課題がたっぷり。まあ、わたしはいつもどおりの点数が取れるとは思うけど。彼は、そうもいかないみたい。

 なぜなら、明日提出の課題がさっぱり終わっていないんだから!

「ちょっと。どうして、課題をやらなかったの。時間はあったでしょ。あなた、部活をやってないんだから」

「勉強したくないんだよ」

「いいの? テストで悪い点とっちゃうよ?」

「おまえのおかげで、いつも平均以上じゃん」

「そうだけど……油断してたら、転がり落ちちゃうのがテスト順位なの!」

「優秀なお前がいてくれたら大丈夫だって~」

 のんびりと、注文した珈琲を飲んでいる彼に、わたしは呆れてしまう。ほんとうに大丈夫なのかな。

「ほら。わたしも手伝うから、さっさと手を動かして」

「へいへい」

「まったく……。やればできるくせに、なんでやらないかなー」

 すると、彼がぼそりとつぶやいた。

「……じゃないと、おまえとの時間がなくなっちゃうじゃん」

「え? なんかいった?」

「……別に」

「なに? いつもうるさいのに。ぼそぼそと~」

「いーから! 課題やろ。まじでやばいから」

「あなたの課題でしょ~!」

 いつになったら喫茶店から出られるんだろう。わたしはうんざりしているのに、なぜか彼は嬉しそうにしている。それにつられて、わたしも笑ってしまう。

 彼との時間が楽しいから、わたしもつい、甘やかしてしまうのだった。

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1分で読めるショートショート・ビオトープ 丸玉庭園 @iwashiwaiwai

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