第16話エピローグ

道化王が死んで二週間が経った。

 今日は旧世代であるフィーリアス達七人の王が天空王の城に集まっていた。

 雲や雹でできたそこはまさに天空。全てが真っ白で壮大であった。

「道化王が死んだが・・・世間は何か変わったか?」

「いえいえ天空王。所詮二十番目の王。神々も悪魔も無関心です」

「まあそうだよね」

「しかしフィーリアス。お前から道化王を狩ると聞いたときは、狂ったかと思ったが・・・」

「まさかあいつ、僕たちを殺す算段をしていたとはねー」

 まるで他人事のように、滅亡王が言う。

 あのとき、バルディスとフィーリアスが会談していた時こんなやりとりがあった。

「――証拠がないんだ」

「証拠?」

「ああ、僕たち旧世代を殺す計画をしてるんだ」

「! ほう・・・」

「でも今のままだったら逆にあいつは殺される」

「だろうな。何をどうしても我らに勝てる見込みはない」

「だけど、花嫁を使ったら?」

「・・・なるほど。強制的でも契りを交わせば我らより強くなるな。なにせ王の中の王になるのだから」

「おそらく明日自ら僕のもとへやってくる。もし花嫁を攫って行けば、証拠として出せる。花嫁との契りは、印をつければいいだけなんだからね」

「つまり王狩りを認定させるには彼女が連れ去られたという事実がいるのか。しかし王会議の信条に反しているから他言無用なのだな」

「そういうこと」

 全てはフィーリアスの予測した作戦であった。しかし、彼自身は莉緒を連れ去られた事実は悔やんでいるようだったが。

「不明王。花嫁は息災か」

「ええ、天空王。元気にしていますよ――っとそろそろ時間だ。行くとこあるんでここでお開きってことでいいかなー?」

「ああ」

「オッケー。じゃあバ~イ」

 フィーリアスが消えたと同時にほかの王達も談笑した後に帰っていった。


 そこは青く茂る草原が広がっているだけだった。しかし天空が常軌を逸していた。

 青空も一つない空に草原を取り囲むように配置されている黄道十二宮の星座たち。そしてさらに覆いかぶさるかのように、数多の遺産、城、像など、色んなもので埋め尽くされていた。

 草原には丸机に対面するように並べられた二つの椅子、机の上には紅茶が入ったポットとティーカップが置かれ、、二つある椅子の片方には誰かが座っていた。

 全身を覆うような大きさの管笠に金細工、銀細工などをぶら下げ、赤地に金の刺繍がしてある道着には様々な動物の模様が描かれていた。

 その名は禁忌王。名を呼ぶことも畏れ多く、誰もその名前を知らない。王という存在、制度など、全てを定めた始まりにして、神の時代を存在のみで終わらせた王である。

 この空間は世界のどこにでもありどこにもない。禁忌王だけの世界。彼が認めたもののみが入ることが許される禁忌王の城そのものだ。

 するとそこにフィーリアスが現れる。

「いやあ、申し訳ありません。待たせてしまい」

「良い良い。気に病むな」

「そうですか、ではまず報告から」

 そう言ってフィーリアスは前で座っている人物に花嫁や道化王について語った。

「そうか。出会ったのか」

「ええ」

「道化の小僧は・・・」

「殺しました」

「そうか・・・」

「報告は以上ですが・・・」

「良い、ありがとう」

「いえいえ、師匠の頼みとあれば・・・」

「・・・フッ」

 謎の人物は小さく笑うと霧のように消えたいった。

 フィーリアスは首をすくめながら、杖をカンッと鳴らし空間を閉じた。


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