第20話 これは独り善がり……だったのだろうか

「キャハハ!!えっ!そんなことで、フフッ……!!そんなことで悩んでたんだ!キャハハッ!!」


 部屋中に鳴り響く爆笑。

 せっかくだから食事とともに話していたのだが、お皿の上がなくなるや否や大爆笑。


 こっちは至って真面目だ。

 現に、喉に食事が通らないほどには緊張したし、珍しく石宮さんよりも遅く食べ終わってしまった。


(てか!)


「そんな笑うことないだろ……!!」


 キッと立てる睨みを見てか、目尻に残る涙を人差し指で拭き取った石宮さんは……やっぱり含み笑いを浮かべながらも、「ごめんごめん」と言葉を返してくれる。


 僕が話したのは……全部だ。

 この家に泊まるのは僕に好意があるから。僕と同じ部屋で寝れるのは僕に安心感を抱いているから。僕と手を繋ぐ……ましてや恋人繋ぎができるのは僕のことが好きだから!


 お恥ずかしながらも、そんな証拠を熱弁してやった。

 最初こそは真面目に聞いていた石宮さんだったのだが、時間が経つにつれて持ち上がる口角には笑みが宿り、終いの果てにはこの爆笑。


 お笑い芸人なら爆笑をかっさらったということで喜ぶだろう。が、こっちは至って真面目な話だったんだよ!

 爆笑されて嬉しいわけがないだろ!なんなら怒りを通り越して恥ずいし!!


「そ、それで私が陸斗くんのことを好きだと勘違い……フフッ、したんだ……フフフッ」

「……そうだよ。というか勘違いなのかよこれ……!」


 今もなお笑っていることはもうこの際無視だ無視。

 それよりも今は『勘違い』という言葉。


 もし仮に僕の予想が勘違いだとしたら、僕はただの女に踊らされた滑稽な男。

 それならばこんなに笑われても仕方がないし、黒歴史も追加された珍妙な人間。


 心のどこかで『勘違いじゃない』なんてことを思っていたのもつかの間、コクコクっと首を縦に振った石宮さんはやっと笑いを収めながら紡いだ。


「勘違いさせてたならごめんね?手とか繋いでたのはほんと、彼女を作らせるための事前練習?的な感じだし、泊まるのも一緒に寝るのもほんとになんの抵抗もなかっただけなんだよ」

「……それまじ?」

「残念なことに、これまじなんだよ。こう見えて人との関わりが少ないから距離感ってやつが掴めないんだよね……」

「掴めなさすぎだろ……!!」


 グッと拳を握り、怒りを堪える僕とは別に、ご馳走様なのかごめんなさいなのか分からない合唱をする石宮さんは深々と頭を下げた。


「いやほんっっとごめん!勘違いさせるつもりはなかったんだよ!ただ初めてのお友達に浮かれてただけで……。それに一緒にいると安心感も抱いてたし、手繋ぐとちょっと高揚感が溢れてきたから繋ぎたくなっただけだから……!ほんっとごめん!!」

「……ん?ちょいと待て。安心感?高揚感?」

「え?うん。他の男子とはちがう特別感?ってのもあるよ?」

「…………なるほど」


 僕はどこぞの主人公たちと違って察しが悪いわけじゃない。ましてやこの目の前にいる彼女と違って恋愛の知識がないわけでもない。


(いやでも、勘違いはしたくないしな……?)


 決めつけるのはダメなことをたった今知った。

 故に、濁すことしかできなかった。


 どんなに石宮さんが不思議がって顔を覗かせてきようが顔を逸らし、ブンブンと肩を揺さぶられようが平然を保つことしかできなかった。


 だってもうあれだけ笑われるのは嫌だし、黒歴史は刻みたくないし、童貞の独り善がりなんてしたくないし!!


(というか、そういう気持ちってのは自分で気づくのが恋愛の醍醐味ってやつだし!)


 そんな言葉を心のなかに残した僕は2人分のお皿を重ね、腰を持ち上げた。


「あちょっと!なに悩んでるのか言ってよ!笑わないから!!」

「言わん言わん。笑わなくても言わん」

「ずるいじゃんそれ!私だけ悶々するの嫌なんだけど!!」

「しとけしとけ」


 軽くあしらう僕の後ろについてくる石宮さんは洗い物を手伝う……わけもなく、僕の肩を揺するだけ。

 だが当たり前のようにスルースキルを発動する僕は、スポンジを右手にお皿を磨いた。

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