「魔王討伐=ハッピーエンド」では終わらせず

魔王討伐までは極めて真っ当、むしろ教科書通りと言っていい勇者物語でありながら、物語の重心は「魔王を倒した後」に置かれている点が最大の魅力です。
英雄とは何か、報酬とは何か、そして“国家”とは誰の味方なのか──そうしたテーマを、ギャグとシリアスを巧みに混ぜながら描いています。

勇者デビィドは、「好感度の高い主人公」ではありません。
むしろ俗物で、調子に乗り、先のことを考えない。
だからこそ後半の転落と徴税官オチが強烈に刺さる構造になっています。

「魔王討伐=ハッピーエンド」では終わらせず、

国家の税制
英雄への報奨金
投資としての勇者育成
“英雄選定ガチャ”という辛辣な比喩

これらを盛り込んだ視点が非常に秀逸です。
特に、国王リシャールの政策描写は単なるギャグに留まらず、
国家が魔王を倒すために何を犠牲にしてきたのかを静かに示しています。

そのうえで、最終的に勇者が「徴税官に追われる存在」になるという落差は、
ブラックユーモアとしても物語の皮肉としても完成度が高いです。

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