苔むした地蔵を気に掛ける少年。そんな彼を見守る、一つのやわらかな目線
- ★★★ Excellent!!!
とても、あたたかな物語でした。出てくる人々も神仏も、皆やさしく力強い。
旅の僧侶が一人の少年と会う。少年は、ひどく苔むしてしまった地蔵を見兼ね、日々その苔を落とそうと奮闘している。
幼くして両親を亡くした少年は、祖父が親代わりとなっている。旅の者が来ると祖父のいる家へと案内し、一宿一飯を提供。その代りに祖父が作っている笠を売るなど、ある種のしたたかさも持ち合わせている。
貧しいながらも必死に生きる少年。そして地蔵を綺麗にしてやろうという優しい心も持っている。
旅の僧侶が少年を見る目線は優しく、同じく「別の何者か」も彼に対してあたたかな目を向けているだろうことが静かに伝わってきます。
厳しい環境に身を置きながらも「良い人間」であることを忘れず、他者への気遣いを忘れない人々。そして、神仏もそれをしっかりと見て応えてくれる。
しっとりと心に沁み渡ってくる、情緒に満ちた一作です。