第3話 解決編(?)
「やっぱり答案の持ち主は矢沢クンだと思う」
「その心は?」
「そもそも使用禁止の多目的トイレに侵入するとか意味わかんないし。あんなところに自分の答案を放置することに意味があるとも思えないんだよねぇ」
一文目については御影が言う権利はないと思う。が、一応頷いておく。
「……まぁそうやな」
「じゃあもう矢沢クン以外に考えようがない。密室でも何でもなく、ただ単に矢沢クンが嘘をついてるんだよ」
「なんで嘘をつく必要があるんや?」
「私がまず考えたいのは、なぜ矢沢クンは答案のホッチキスを外したのかってことぉ」
「え、たまたま外れただけなんちゃうんか?」
「想像してみてよぉ。たまたま破れたんだとしたら、片方の紙にホッチキスが残り、もう片方の紙には線状の穴が開くはずでしょ。『二個の穴が開いている』なんていう状況は起こりえない」
「なるほど、たしかに」
「じゃあなんで二枚の答案を取り外したのかなぁ。理由は無数に考えられるけど、ここで注目すべきなのは、二枚の答案のうちなぜか二枚目だけが置き忘れられていたこと。一枚目はどこ行っちゃったんだろう。さらに、なぜかトイレが使用禁止になっていたこと。これらから導かれる答えはただ一つ——」
「ほう……?」
「矢沢クンがトイレに入ったとき、トイレットペーパーがなかったんだぁ。予備も含めてね。大をしてからそのことに気づいた矢沢クンは、仕方なく持ち合わせの数学の答案で……」
「なかなか汚い話やな」
「矢沢クンが嘘をついたのはまさにそれが理由だよぉ。57の答案が自分のだって主張しちゃったら、君に汚い話がバレちゃうかもしれない。だから言えなかったんだぁ」
「使用禁止になったのは、一枚目の答案が詰まってトイレが壊れたってことか。でもそしたら、多目的トイレのトイレットペーパーは切れてるはずなんちゃうか? そんな話は聞いてないぞ?」
「矢沢クンは汚い話を隠蔽するために他のトイレからトイレットペーパーを拝借して多目的トイレに取り付けたんだよぉ。拝借したトイレには、そのトイレに置かれてた予備のトイレットペーパーを取り付けたんだぁ」
「ほほーう。なるほどね。納得やわ」
と言いつつも、俺は心の中で首を振る。御影の推理はものの見事に全部間違っている。
57と書いてあったのは矢沢快斗の答案ではない。俺の答案だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます