私はお前を許さない

燈栄二

私はお前を許さない

 いきなり強い言葉を使い申し訳ない。弱く見えているのは分かっている。まず、ここに登場する「お前」はあなたではないので安心していただきたい。ここでは、「恨んでいる人物」とでもしておこう。


では本題に入ると、「私はある人物を憎んでいる」事情は割愛するが、ひょんなことからその人物と私をめぐって、第三者といざこざがあり、私にも非はあったものの、「ある人物」の問題行動の被害を私は間接的に被り続ける形になってしまった。


ここで本来憎むべきは、「ある人物」ではなく、いざこざを起こした人物たちである。脳みそは「そうだそうだ」と大合唱。しかし、私はいざこざを起こした人物にも事情があり、この人物らに非はないことは認めている。だが、「ある人物」は自分の行いを反省もせず、今でも私に風評被害をまき散らす可能性がある。


故に、私は「ある人物」に憎しみの矢印を向けている。


 しかし、好きの反対は無関心、というように関わりたくないなら放っておけばいい。私が「ある人物」に執着し続けているのは、ある意味この人に関心を持ち続けているからかもしれない。


私はきっと「ある人物」を放っておけないのだ。理由は何となくわかる。昔の自分に似ているから。誰かに評価されたい、有名になりたい、漠然とすごい存在になりたい。


現実と理想の乖離に苦しんだことは私にだってある。「ある人物」はまさに今、理想と現実の間を苦しんでいるのだ。その後この人物がとった行動には一切の共感をしないが、理解は示す。


結局のところ、私は「現実なんてこんなもんだ」と良く言えば納得、悪く言えばあきらめてしまった。この諦めによって、私は乖離から解放されたのだが。たまに人気者が妬ましくなる日はあるが、自分の作品を面白かったと言ってくれる人がいれば、それでいいやと思えてしまう。


 ただ、「ある人物」は私と違って、今でも人気者になる夢を諦めていない。しかし、行動プロセスの中に私にとって許せないものが含まれている。この「許せないもの」こそが私がこの人を憎む所以だ。


だからこそ、私はこの人物が間違っていることをしている間は何としてもこの人を止め続ける。過去の自分の足を掴み続けるのと同じだとしても。なんて言うと大層に聞こえるが、実際は憎しみを捨てられない。


もしかしたら、今でも夢を追いかけている「ある人物」が、私には眩しいのかもしれない。太陽に雲がかかるのを願うように、私は「ある人物」が光を弱めることを望んでしまうのかもしれない。


 これほどの執着ならば、手放してしまえばいいじゃないか? そうお思いになる方もいるだろう。その通りだ、私もそうすれば良いと思う。しかし、今は出来そうにもない。私は輝かしい「ある人物」を追いかけ続け、泥沼の中に引きずり込んでやる日を夢見ている。


この執着を手放すことが出来た日、私は初めて大人になり、無限に続く生まれ変わりから抜け出せるのかもしれない。そうしたら、私が創作の中で追いかけ続ける「永遠」をこの手に掴む日が来るのだろう。



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私はお前を許さない 燈栄二 @EIji_Tou

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