Thread 03|もっと怖いことは(終)
ホームルームが始まり、担任が教壇に立った。
4人目の行方不明者が出たことを告げるとにわかに教室がざわつく。
けれど、このざわめきも、やがて静かになる。
まるで最初から、その人なんていなかったかのように。
誰かが消えても、数日もすれば、みんな“当たり前”みたいな顔をして過ごす。
名前も、顔も、記憶も、何もかもが、簡単に上書きされていく。
私はそんな光景を何度となく見て、気づいた。
きっと、どこかに消えることよりも――
“いなくなった人”として、誰の記憶からも消えていくことの方が、よっぽど怖い。
この世界に“私がいた証”すら、誰の中にも残らなくなる。
それだけは、絶対に嫌だった。
教室のざわめきの中で、私はゆっくりとスマホを取り出した。
画面の上に浮かぶ、見慣れた文字。
『ミズキ:通話中(9967時間31分)』
一年以上も消えない表示。
あんなにうるさかったケンジが、ここ数日ほとんど喋らなくなった。
目を合わせても、すぐに逸らす。
……もう、"繋がってしまった"んだろう。
そのことに気づいているのは、きっと私だけ。
――サトシが学校に来なくなって、もう2週間が経つ。
終
[ThreadStory] 絶対に出てはいけない着信~外伝「ユイの通話」~ 風光 @huukougensou
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