「てのひら」に包まれるような優しさ、 小さなカウンセリングルームの物語

心理カウンセラー・久坂撫子が、訪れるクライアントたちの心の闇と向き合い、解きほぐしていく連作短編です。

舞台は千葉県の海辺にある小さなカウンセリングルーム「てのひら」。
日々のコーヒーとアナログな道具に囲まれながら、撫子は一人ひとりの心の痛みに真剣に向き合います。

印象的なのは、カウンセリングの現場描写がとてもリアルであること。
予約制の理由、沈黙を「待つ」技術、問診票の活用など、専門的な知識が自然に物語に織り込まれています。

心理士という仕事を知らない自分でも、「こんな風に人の心を支えるんだ」となんとなくイメージ出来ました。

また、ケースごとの人間模様が濃く、心の複雑さと温もりが染み込んできます。

主人公・撫子は決して完璧でも華やかでもないけれど、クライアントの心に寄り添う姿はとても誠実で温かい。
時には厳しく、時には友達のように距離を縮め、そして「卒業」を目指す姿勢が一貫しています。
このプロフェッショナルな姿勢が、物語全体を優しくも芯のあるものにしてるのでしょう。

これは個人的な感想ですが――読み終わった時、人ともっと丁寧に接していこうと、あらためて自分を見つめ直す気持ちになります(*^-^*)


心理や人間関係に興味がある人はもちろん、人に寄り添うお仕事をしている人にもおすすめしたいです。(もちろん、そうでない人にも楽しめます♪)

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