第9話 集合日

〈ジェニファーの場合〉


一人になったジェニファーは、行く当てもなく歩いていた。


――誰の所に行くとしようか


うろうろとさまよっていると、騒がしくなってきた。


――うるさいな。何をやってるんだ?


不思議に思ったジェニファーはその場所に向かう。

その場の中心にいたのは……。

科目女子こと教科書の神10人と、玩具おもちゃ男子こと玩具の神5人。


よく見ると、そこにはステージのようなものがある。

どうやら神たちが何かを発表する場らしい。


「ダルサあああああああ!!」


理科の教科書の神・ヒカリの叫びが聞こえる。

繰り広げられる乱闘。

戦闘劇をやっているようだ。


――へえ、面白そうじゃないか。


興味をもったジェニファーは、騒ぐ神とともに劇を鑑賞することにしたのだった。



〈フューズ・クロトの場合〉


人気の少ないその場所で、二人は向かい合っていた。

二人が同時に一歩踏み出し、同時に口を開く。


「篤人」「黒羽」


フューズもクロトも、今は篤人・黒羽モード。

誰もいないからこそ、二人はにらみ合っている。

一時の静けさを破るように黒羽が言う。


「今は篤人じゃなくフューズか……。久しぶりだな」

「お前こそ、クロトとかいう名前になったんだろ?僕のことは篤人でいいけど」

「じゃあ、俺も黒羽でいい。なあ、篤人。いつかの決着をつけないか?」

「僕は構わない。茜も喜ぶだろうからな。嫌味なお隣さんを倒したら」

「ああ、アカネか。アカネっていう名前も久しぶりに聞いた。思い出したよ」

「アカネじゃなくて茜だって言ってるだろ」

「さすが、この違いを聞き分けるとはね」


二人が延々と話し出す。

仲がいいのか、悪いのか……。

半分楽しそうにはなすこの時間は、とても長く続いた。


〈キリの場合〉


「うう~んっ」


大きく伸びをしてキリが歩く。

さぞかし気持ちよさそうな様子で、誰もいない道を歩いている。


――黒羽君がいないのはさみしいが、たまにはまったり一人で過ごすのもいいかもしれないな……。


そんなことを思いながらキリが歩いていると、遠くに背の高い女性が見えた。

美の神――ルイージュだ。

美人でおとしやかなルイージュはみんなに好かれている。

そのためか、ルイージュの周りにはたくさんの人が集まっていた。


「やあ、ルイージュ」


キリのその一声で、周りが固まる。

ひそひそささやく声が聞こえる。


――やれやれ、有名人はつらいね


そうキリは思うが、周りの声はこんな声だ。


「あの、キリ?」「ルイージュ様になんのようだ」「ちょっと、この場はなれよう?」


そんなことは一切気にせず、ルイージュに近づくキリ。

二人の談笑は、集合日が終わるまで続いた。

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神様の書庫 かえで @kaedenikomaru

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