黒羽と篤人

第8話 一週間の休暇

「さあさあ、一週間の休暇だね。ふっふっふっ、なにやろうかな」


「休暇と言っても、明日は集合日ですよ?」


「え――!せっかくの休暇なのに、集合日なんて、一日損してるじゃあないか!どうにかならないのかい、フューズ!」


「どうにかと言われてもですよ。僕程度の権力ではどうにもできないイベントです」


集合日とは、全ての神が一斉に同じ場所に集う日。

たいてい人間界で言う3月の第三曜日に行われる。

春の始まり、年度の終わりと始まりの時間ということで、神たちが集まってお茶会をするのだ。


「あーあ、集合日っていうことはあの人も来るのかい?」


「来るでしょうね」


その声でますます残念そうに頭を抱えるジェニファー。


「ネロ……あの人とは、あまり会いたくないんだけどね」


「僕はクロト様に興味があります。あの人とは人間界での幼馴染で、ライバルなんで。」


そういうフューズの目がキランと光る。

ネロ――闇の神。自分勝手で有名な神。ジェニファーはかなり嫌っている。

ちなみに、クロトというのはネロの執事だ。

ジェニファーが頭を抱えながら、次の日が来た。


「ジェニファー、久しぶりだな」


「やあ、ネロ……。久しぶりだね。あれ、クロト君はどこにいったのかな?」


「君こそ、篤人君がいないじゃないか」


「ああ、フューズならそろそろ来るよ」


内心冷たくジェニファーが答える。後ろからフューズがやってくる。

フューズはペコリと頭を下げて言う。


「こんにちは、お久しぶりです。ネロ様」


「やあ、篤人君。久しぶりだね~~」


「あの、クロト様は?」


「黒羽君なら、そろそろ来るよ」


ネロは執事のことを本名で呼ぶ。黒羽くろは――クロトが後ろからやってくる。


「あっ、来た来た。く~ろ~は君っ!」


「こんにちは、お久しぶりです。ジェニファー様」


「久しぶりだね、クロト君」


フューズがすっと前に出る。


「クロト様、お久しぶりですね。見ない間に嫌味が増したんじゃないですか?」


「久しぶりですね、フューズ様。僕の言いたいセリフを言ってくれて、感謝します」


二人はにらみ合う。バチバチと飛び散る火花が見えそうだ。


「黒羽君、キリはどこだい?」


ネロの言葉でクロトモードになる黒羽。


「キリ様ですか?多分、ルイージュ様の所にいるかと」

「よし、じゃあ会いに行こう。黒羽君は自由にしてていいよ。せっかくの集合日だからね」

「ありがとうございます」


うやうやしく頭を下げるクロト。

ジェニファーもパチンとウィンクをする。

自由にしろという意味だろう。フューズもペコリと頭を下げ、微笑んだ。

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