その空を「虹の卵」と呼びたくなる
- ★★★ Excellent!!!
カクヨムでもっとも有名な歌人のひとりによる短歌集です。
幻想と現実を結んで、何かをあぶり出すような作風です。
思考実験のような歌から、正統派の胸をすくように情感的な短歌まで、バリエーション豊富で楽しみながら余韻に浸れます。
短歌的な技術のほか、季語や二物衝突など俳句で見られる技術もあって、文面以上に詩を含んでいるので味わい深いです。
印象深かった歌(感想は主観です)
「ドラキュラの血しか吸わないドラキュラの血しか吸わない瑠璃色のヒル」
幻想の条件が何重にもかけられていて、ぜったい見つからない幻獣。すごい面白い。どんな生態なんだろ。
「かきごおり 貴方のいない世界にも慣れてきている自分が怖い」
喪失したことを心が認めてしまう切なさ。また夏が去る
「傷つけて傷つけられて許し合う勇気が欠けていた夏の雪」
現実の歌と思いきや、最後の「の雪」で幻想に。二人の捜し物は見つからないのでしょうか……切ない。
「夏空は悲しく晴れているけれど虹の卵を秘め持つだろう」
詩的で綺麗と思いました。今度、夏の雲を見たら「虹の卵」と呼んでみようと思った。