桑都もののけ裁縫帖

心を閉ざした少女、月影紡（つきかげ つむぎ）、十七歳。

両親を不慮の事故で亡くし、時が止まった家から逃れるように、今は亡き祖父が遺した八王子の古民家へと移り住む。

そこで彼女が見つけたのは、色とりどりの糸と布が眠る、不思議な『工房』。

そして、祖父の魂が宿る、一人の『執事ぬいぐるみ』だった。

「我ら月影の家は、この世ならざるものを布に変え、ぬいぐるみとして使役する『織紡師（おりつむぎし）』の血筋なのじゃ」

それは、悲しみから逃げるための裁縫が、世界と向き合うための戦いへと変わる瞬間だった。

オカルト好きの騒がしい友人、個性豊かなもののけぬいぐるみ達との出会いを経て、紡の凍てついた心は少しずつ温もりを取り戻していく。

これは、孤独な少女が絆という糸で過去を紡ぎ直し、未来を縫い上げ…続きを読む