掌編「盲導犬」
信用していないわけではないが、盲導犬――
目の不自由な人を誘導してくれる、鍛えられた犬ではあるが……見ていてハラハラする。
歩道のギリギリを歩く盲導犬と飼い主の女性。
長い黒髪を風で揺らした白いワンピース姿の女性は、盲導犬に全てを委ねている……そう、彼女の命は犬の誘導に懸かっているのだ。
そう考えると、一歩でも踏み外せば車道に出てしまいそうな誘導の仕方には一言いいたくなる。犬相手になんて言えばいいのだろうか……。
わん、で通じるわけもないのだし。
お節介ではあると思うが、見て見ぬふりをするのも気持ち悪い。
ので、大きなお世話であることは重々承知の上で声をかけることにした――
「はいはい、そこのお姉さん!」
声をかけると、女性が振り向いてくれた――と同時に。
盲導犬が犬歯を剥き出しにして吠えてくる。かなり攻撃的だ。
勝手なイメージだが、盲導犬はおとなしいと思っていた。
……が、いやはや、猛獣のようだった。
女性を守る騎士にしては喧嘩っぱやいと言うか、守るよりも”戦いたい”が前面に出ている気がする――とにかく。
盲導犬にしては
なるほど、こいつは盲導犬ではなく、獰猛犬だったのだな?
… おわり
黒光りする”そいつ”だって じっと見てしまうモノがある 渡貫とゐち @josho
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