『AI裁判: -JUDGE-β』

時は今から、近いようで遠い未来――。

裁判所にはもはや人の声は響かず、冷たい無機質な合成音が「判決」を読み上げる時代。
弁護士という職業は、すでにAIに取って代わられつつあった。
法の知識も、論理の構築も、感情なき機械のほうが速く、正確だった。
正義はもはや“最適化”されるものであり、人の感情などはノイズに過ぎなかった。

だが、そんな時代に逆らうように――
古びた鞄を片手に、法廷に立ち続ける男がいた。
名を、法条 律（ほうじょう りつ）。
人の心の機微を読むことに長け、AIでは掬い取れぬ「情」を信じていた。
強きを挫き、弱きを助け、そして、
時に加害者の涙にすら、耳を傾けてしまう。
時代錯誤の弁護士。
だが彼の目には、いまだ「正義」が人の手で守られるべきだという確信が宿っていた。
そんな…続きを読む