第5話 特急さつまエクスプレス

親切な運転手さんのおかげで、夜中には無事に鹿児島駅に着くことができた。お礼を言ってから、電車を降り、駅の待合室を借りて野宿をさせてもうことにした。

待合室の椅子は寝るのには不向きで、ほとんど眠れないまま朝を迎えた。

バキバキになった身体をコキコキとさせながら、駅のトイレを借りて顔を洗い、簡単に身支度をととのえる。そして朝一番の特急さつまエクスプレスの切符を買った。

9時33分、側面に紙でさつまエクスプレスと書かれた、黒っぽいゴツゴツした列車が入ってきた。

『ただいま到着の電車は特急さつまエクスプレス号宮崎行きです。途中止まります駅は、加治木、隼人、国分、霧島神宮、西都城、都城、清武、南宮崎、宮崎です。』

そうして、自分の座席に腰掛ける。同じ車両には誰も乗り込まないまま、定刻通りにドアが閉まると、電車は徐々に加速する。木夏は待合室よりは幾分居心地の良い座席で、電車の揺れに任せて眠りについた。


どれぐらい時間が経っただろうか、ものすごい金属音と揺れで目が覚めた。

『お客様にお知らせいたします。ただいまこの列車の進路上に土地神が現れましたため、この列車清武駅手前で停車しています。……うわあっ!』

(…?…)


アナウンスは途切れたまま、電車も止まったままだ。

「仕方ないな。」

木夏は走って、車掌室へ向かった。

「あれか。」

(これは…宮崎の土地神…?マンゴーか…?)

木夏は前の村で使った剣を抜いた。

「うらああああああ」

そうすると敵は、まっぷたつにあっさり切れたように思ったが、次の瞬間には既に復活した。

そして、あっと思うまもなく木夏はとらえられてしまう。

「んっそっだ。いただきます」

(土地神が意識を持ってしゃべってる‥⁉︎)

「あーん」

剣を振り回そうと目一杯の力で足掻くが、完全に拘束されている。

(このままでは勝てない…!)

「んっそっだ。んっそっだ。……ぐええげーー!!」

マンゴーの土地神は大きく開けた口からぼろん、と何かを吐き出した。口から出てきたのは、なんと車掌さんで、木夏は

「え、車掌さん…」

と、思わず声にしてしまうほど、きれいに丸呑みにされていたのだった。


「んっそっだ。まずかった。んっそっだ。若い人の肉うまい。」

「いただきまーすうへへへへへ」

今度は木夏に向かって大きな口を開ける。

今度は自分が丸呑みにされると思った木夏は、

「ぎゃあああああああああああああ」

と目一杯叫ぶと、土地神は声の大きさに一瞬目を白黒させたが、すぐにニヤリと不気味に口が歪んだ。

「んっそっだ。んっそっだ。血気盛んな人間はうまい。ますます楽しみだ。集まって!」

(みんなだと…)

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Jaaaaaaapanese こーいちろー @number516

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