冬のご馳走

今年は昨年に比べて冬野菜がたくさん収穫できた

そのためか今日の夕食はいつもより豪華な食事になるらしい 

僕は喜びのあまりサナラとハイタッチをして喜んだ

やったね!

そんな僕たちを父さんは野菜の選別をしながら見ていて

 「お前らなぁ 手伝わないと温かいうちに夕飯食べれないぞ」と父さんは苦笑しながらもいつもより野菜の選別の速度は早かった

父さんも今日の夕飯楽しみにしてるじゃないか!

最近は野菜や魚も入手がしづらかったから、具沢山なんてとっても久しぶりなんだよ!と僕は父さんに力説しようとしたが、父さんも早く温かい料理が食べたいと気づき僕は父さんと一緒に黙々と野菜の選別をした



僕たちの夕飯は野菜や釣りなどの収穫量で食卓に並ぶ数が決まる。

今年は昨年に比べて質のいい野菜と味は問題ないが形が不恰好な野菜が8:2の割合で収穫できたため、今年の冬の貯蓄と貯蔵は問題ないだろう。と父さんが問屋さんに卸し販売をし給金を得る野菜と家族又はご近所さんに配る野菜その二択に仕分けていた時に呟いていた

母は床に並んだ野菜と家で使う野菜を見て

「あら、今年は豊作ね〜」と嬉しそうに呟き。形が少し歪なハルシーとニルラを手に取って腐っていたり色が変わっているところを刃物で選別しいつも料理で使っている鍋にボトボト入れて煮込み始めた


サナラは母の手伝いで今日のメインお隣さんからもらった地元の魚 フラルバルを

慣れていない包丁での調理で捌いていた、時折母さんの方をチラチラ見ながらワクワクした様子で

「ねぇ母さん!今日のご飯は何?教えて!」

といつもよりもキラキラ目を輝かせた様子で母さんに質問していた

母さんは少し考えて「そうねぇ今日はハルシーとニルラあとサナラが捌いてくれたフラルバルを煮込んだスープにしようかしら」

と首を傾げながら母は父の方を見て

「ねぇ、ベンルック、今日はスープあとでダラズさんにもお届けしてくれない?」

今日このフラルバルをお裾分けでいただいの と切った野菜を煮込みながら父に話していた。

父は「わかった」とそれだけ言い父は今日使った農具の修理を外にある倉庫でし始めた。

父が農具修理をしているところを僕はただ見ていたが、やることを思い出し家の中に入った家に入ると

鼻をくすぐるようないい匂いがしてきた。

僕は椅子から立ち上がり机を水で濡らした布で拭いた

少しでも清潔に保てるようにと母はいつもご飯の直前になるとテーブルを拭いていたから僕はそれを真似し片手をうまく使いながらテーブルの周りをぐるぐるしながらテーブルを拭いていたら

「出来たわよー」

「出来たーー」

母とサナラの声が聞こえたと同時に今度は父の声で「こっちも終わった」と父も家の中に入ってきた

今日も無事に家族全員で食事を取れることに感謝だ

きょうの料理はとれたてのちょっと形が悪く商品には使えないハルシーと大きさが小さめなを使った温かいスープだ

冬の序盤から気温が氷点下を下回るこの地域では温かい味がついているスープはとても貴重だ、今日作ったスープはいつもより多く作ったらしく父は後で鍋を持って近所の人にお裾分けをしに行くらしく器に配膳されたスープはハルシーが沢山入っていた

「「「「いただきます!」」」」

家族のみんなで食べる食事はやっぱりとっても美味しい

「美味しい〜!」

サナラは温かいスープを美味しそうに頬張っていくその姿を見ていると自然と父の頬が緩んでいた熱そうにしながらも時折ハフハフ口をパクパクさせながら食事を口に運んでいたサナラは熱かったのか口元からは湯気が漏れていた幸せそうな表情を見ながら僕や父と母も一緒にご飯を食べ進める

今日のスープは具材がよく絡んでいて美味しいな

ご近所さんからもらった煮込んだフィラバルもふんわりと煮込んであって魚が少し苦手な僕でも食べられるから今日のは好きだな

そんなことを考えていると父さんが席を立ち家にある小さな倉庫からこれまた小さな父さんの手のひらぐらいの大きさのお酒を取り出してそれを開けた

ポンといい音がして父さんはいつも使っている年季の入ったコップそして母のコップにも同じ量のお酒を注いでいく

トクトクとコップにお酒が注がれる音が静かに食卓に溶け込んでいく

ふと父さんは、コップに注がれた量が少ないお酒をちびちび飲みながらボソリとつぶやいた

父さんはお酒が入るといつもの無口はどこへ行ったのやら父さんが抱えている本音が普段より多く漏れやすくなる。

「今日、サナラとラルシが野菜を運んでいた時突然コケただろ」

僕とサナラは転けたことを思い出し苦笑いをしてしまったがこくりと頷いた

父さんは僕たちのその様子を見て はぁ と深いため息を吐いた

「父さんはあれを見てとっても焦ったんだからな」と父は年季の入ったコップを握りしめながらも優しい目で「ほんと、お前たちはまだ子供なんだだから、気をつけてくれ 父さんみたいに無鉄砲にはなるなよ」

と父さんは僕とサナラの頭をわしゃわしゃとその大きな手、撫でてくれた。

僕とサナラは父さんが撫でてくれることが大好きだった

母は父さんと僕たちの様子を

「ベンルックあなたは相変わらずね。」と優しい目で父と僕たち兄妹を夕食を食べながら見ていた


「「「「ごちそうさまでした」」」」

今日はたくさん食べたなと僕とサナラが一息ついていると父は立ち上がり

「それじゃぁ早めに行ってくる」

と父は暖かい服を何枚も羽織り母から今日作ったスープが入っている鍋を

いつも使っているカゴに詰めてもらい鍋の中身がこぼれないように木でできた鍋蓋で蓋をした

サナラが不思議そうに「父ちゃんどこにいくの?」と聞いた

父は「魚をもらったからダラズさんにこれを渡しに行ってくる」

サナラは そっかと呟き 気をつけてねと父を見送りながらも父の背中に背負われている籠に目は釘付けだった 

僕らが住んでいるところは、他の住民の方から何かをいただいたらお返しをする文化が根付いている。

そのため今日はダラスさんから魚をいただいと言っていたからお返しはこのスープなのだろう

僕は少し悲しそうなサナラの頭をポンポン撫でた

父は「行ってくる鍵は閉めといてくれ」と父は家の扉を開けた

外気が家の中にたくさん入ってきた サナラは「さむっ」と呟き僕にぴったりくっついてきた


今降っている雪は夕方よりもさらに勢いが増している気がする。

寒そうだな、そう思いながらも

父はいつもの表情で農作業に使っている布をかぶり

「行ってきます」

と父は家から出発した

どんどんと父の姿が遠くなっていく 母から 「二人とも寒いから扉閉めるわよ」と言われるまで


僕は父の後ろ姿を見送っていた

雪はさらに多くなり僕より大きい父の足跡もすぐ新しい雪に埋もれた

今日は雪がひどいな今日は積もるだろうな

お隣さんと言っても家から歩いたら片道でも10分もかかる道のりだ

こんな天気だったらさらにかかるだろうな。

そんなことを考えながら

僕は扉を閉めた

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経験値は   になる 杏原 千鶴 @sadceqfqwasdsad

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