冬の野菜
僕が骨折してから三ヶ月目に入り始めた今年も冬が始まった
「あいててっ」
冬に入り始めた時期から、治療をしてくれた先生からは、無理のない範囲で動かし始めてくださいと伝えられた僕は家の内職の手伝いや畑作業など腕を動かす行動をさらに増やし始めた
全く動いていなかった腕を動かし始めたのだから、やっぱり動かすたびに腕はヒリヒリと皮膚が焼けるように痛い
だが徐々に動かしているからか、一番ひどかった頃よりはだいぶ動かしやすい、僕は無理のない程度で、家の手伝いをし始めた。
骨折前みたいに脚立とかの高所作業はできていないためまだ万全な状態ではない、
最近はやっと鍬を5回以上振れるようになったのは大きな前進だと思う
今日は寒いなぁ
「父さん、これ家の中に入れておくね」
寒空の下、僕と父さんは畑仕事をしていた
鎌を使い今年、育てている野菜を収穫していた父さんは、目線だけをこちらに向けて
「ラルシ、待てまだは収穫は終わっていない、詰め始めるんじゃない」
その言葉を聞き僕は冬野菜をカゴに詰めていたが手を止めた
「もう少しで終わるから、そこで待ってろ」
父はまた鎌で収穫作業をし始めた
サクサクと雪と農作業する音が畑に響く
僕が好きな音その音は地面に空に鳴り響く
長閑な時間が過ぎるのはあっという間だった
「兄ちゃん、父ちゃん!」
僕の背後からいつも家で聞いている明るい声が聞こえ
僕は後ろを振り返った、だが妹のサナラの姿をみて僕はギョッとした
なぜかって?洋服と手がありえないほど泥だらけのサナラがこっちに向かってきていたためだ
僕は父さんをみた、父さんは顔を顰めて不機嫌そうに
「サナラ!手ェ洗ってから野菜触れ!」
と野菜を運ぶために木籠に入れようと野菜に触れようとしていたサナラを叱った
サナラは「えー」と不貞腐れたが
野菜に愛を込めて育てている父さんの前でその泥だらけの手を使って野菜をつかむのは流石に僕でも注意はするよ、ましてはこの野菜は僕たちだけが食べるものではないのだから
サナラは先ほどのウキウキとした気分が綺麗に無くなったのだろう、しょんぼりした顔をしながら畑にある手洗い場に向かった
数分後
「父ちゃん!手 洗ってきたよ!」サナラはにっこりとした誇らしいそうな顔でこちらに走ってきて父のまえで立ち止まり綺麗になった手を父に見せていた
父はその手をじっと観察してこくりと頷いた
サナラは野菜を触っていい許可が降りたみたいだ。
「ニルラの他にお家に持っていくものある?」
とサナラは冬野菜の代表農作物でもある根菜類のニルラを脇に抱えながら首を傾げた
「それじゃぁ」
父は少し悩んだ末この地域の冬の特産の野菜である大小異なるハルシーを農作物専用の木籠に詰め始めた
「これも持っていってくれ」とサナラに大量にハルシーを詰め込んだ木籠を渡した
ハルシーは葉物野菜で生で食べるとしゃりしゃりとした食感が特徴的な野菜で火で茹でるとトロトロとろける特徴がある。
ハルシーは一つ一つがとても重量があるので妹一人で運ぶのは大変だと想いサナラが抱えていた木籠の左側を僕は持った
「サナラ、僕も手伝うよ。」サナラは最初は驚き心配そうに僕の怪我した腕を見たが自分が抱えている木籠を見て
大量の野菜たちとその重さでは流石に一人では運びたくないらしく素直に頷き
僕たちはハルシーを運び始めた
自宅まであと少し今年は出来がいいのか、やや大きめのハルシーそしてをニルラを僕達は一緒に運んでいた最中
突然 強風が吹き荒れた
「うわっ!」
足元を掬われた僕達は足を滑らせてこけて尻餅をついたその衝撃で運んでいたハルシーとニルラがコロコロと地面に散らばる
二つの野菜は丸っこいためコロコロと土を被りながら坂を下っていった。
「ラルシ!サナラ!大丈夫か!」
僕たちの様子を見ながら作業をしていた父さんが慌てた様子で農具を担ぎながら近づいて来るので
僕とサナラは立ち上がり父さんに向けて
「大丈夫!」
僕たちは明るい笑顔を作った
野菜拾いに行かなきゃ。
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