Day20 包み紙
土竜の後ろをついていくと、不思議なほどあっさりと元の場所に戻ることができた。暗い通路を通り、行った先のドアを開けると、そこが海岸に繋がっていたのである。土竜は私からランプを受け取り、「これは皆さんにお渡ししているので」と言いながら粗品をくれた。そうしてまた地中に戻っていった。
「よかった~! 戻ってきた! びっくりしたじゃないですか~! えーん」
浮き輪売りは思った以上に私のことを心配してくれていた。アシカたちに慰められながら浜辺中を捜索していたらしく、砂浜一面に彼の足跡と屋台の車輪の跡、そしてアシカたちの足跡がついていた。アシカたちは口々に「見つかってよかったね」と言いながら、海の中に戻っていった。
「そういえば、この粗品って何だろう」
私は熨斗と包み紙をとり、小さな箱を開けてみた。中には焼き菓子がふたつ入っていたので、浮き輪売りと流木の上に座って食べた。さっきにわか雨が降ったはずなのに、流木はもう白く乾いていた。
日は高く昇り、海は沖に向かうに従って青い。さっきまで地中にいたからか、目に染みるような青さだった。
「このお菓子美味いですね」
「美味いですねぇ」
粗品は交換なしでももらえるんだな……などと考えていると、浮き輪売りがさっきとった包み紙を私に差し出してきた。
「裏に印刷してありますよ」
見ると、交換所の地図と連絡先だった。地図はまったくアテにできないが(だだっ広い空白に「このへん」と書かれた〇が書いてある)、連絡先はいつか使うことがあるかもしれない。私は包み紙を畳んでポケットにしまった。
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