【楽園の天使の話】

生まれは楽園。育ちも楽園。

そうともなれば、行動にも言動にも生存にも飽きが来る。



ある日、楽園に迷い込んだ人間がいた。

その人間はどうやら主のお気に召さなかったらしく、天使の方で好きに処理していいという話になった。

でも、こっちもそれは面倒だったから天使の中の誰かが勝手にやってればいいなとそう思った。





この楽園の端で、その人間は死んだ。そして、それを殺したのは『探求の天使』と呼ばれている天使で、人間の体内の構造が気になったのか殺す為に使った刃物で切りこみを入れて両手で開いた。

ボクはその様を見て、興味が沸いた。だから隣に行って一緒に見た。


あの後、許可もなく解剖をした『探求の天使』と止めなかったボクは怒られた。

『探求の天使』は罰として処分され、その羽がボクに無理矢理くっつけられた。

この片目も、片腕も、4枚の羽根のうちの2枚も。全てが探求の天使のもの。このもう1つの■だって探求の天使のもの。


彼とは仲がよかったから止めなかったんだ。って主に言ったら申し訳なさそうな顔でこちらを見て頭を撫でられた。■を無理矢理詰め込まれたせいで頭が痛い。





ボクの脳と探求の天使の脳が融解し、1つになった頃。主はボクにちょっとした提案をしてきた。

それは、この楽園を出て外を学ぶ、といったもの。探求の天使の一部を中に詰め込まれたボクからすれば、丁度良かった。

人間の身体の中身は形を変えても大丈夫なのか気になっていた。

人間はどんな苦痛にも耐えられるのかどうか、気になっていた。

解剖した後はその中身を引き摺っても大丈夫なのか気になっていた。

臓物の形、色、匂い、感触。あとは食べても平気なのか。気になっていた。

生物は死んでも生きているのかどうか気になっていた。




そんな事を思いながら楽園から地へとやってきた。

ボクは人間になりきれず、怪異にもなりきれない。なのに学園の七不思議という位置に落ち着いた。

学園の生徒に勉強を教え、時々近くにいた生物を使って解剖し剥製を作りながら、大体数百年は七不思議として生きた。そのおかげか、ありとあらゆる物事への知識がついた。今では解けない問題も無く、知らない事も無い。


そして、ボクは恋をされた。勝手だな、と思ってはいたけれど。恋に一生懸命な姿を見て微笑ましくなった。だから気に入った。

だからボクのものでいて欲しかった。

ボクは初めて執着というものをした。本当はしてはいけなかった事だけど、主は黙認したらしかった。



ある日の夜。ボクは彼女を理科室誘い、そのまま理科準備室へと手を引く。

そして彼女を剥製にされた蝶のように生き場を失くさせた。

彼女は流石に嫌がってしまったけど、それでもボクは解剖を始める。

麻酔なんて感じのいいものはない。だから脳を流れるドーパミンに頼ってもらうしかない。





それから大体数時間。

途中でお互いのハジメテを捧げたりもして、数時間後。

快楽と苦痛でぐちゃぐちゃにされた彼女は、ボクの目にとても美しく映り込んだ。

あまりの愛おしさについ口づけをしてしまったりもした。

ぴくぴくと痙攣し、翅のように広げられた背中の皮。心臓付近の皮を裂き、まるで心臓を守る籠のように魅せられている。

その芸術品のような様を見て、ボクは彼女を蝶のようだと認識した。






そんな彼女が逃げないよう、まるで本物の標本であるかのようにピンを刺す。

そして、理科準備室を後にした。

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それにしても畜生。 魔人。 @Majin-444666

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