【事故で壊れた、人形となった存在の話】
「こほ、こほ」
壁の外にあるコロシアムの壁にもたれ、保てそうにない息を整えようとする。
「こほ、こほ」
足は
腕はまだ無事だ。
「こほ、こほ、こほ」
痛みで下を向いた。血を吐いてしまった。
「こほ、こほ…………。」
あぁ……もう………………
看取ってくれるのは、キーパー達だけらしい。
あの日起こったキーパー達の移動事故で、私は足が止まった。
その日から、私は車椅子を使う事になった。
それでも、学校にはいかなければならなかった。…………能力者だらけの学校は、この事故が原因で退学し、代わりに壁の外の学園に通う事になった。
私の親は壁の外を嫌がった。私が出る時は見送りすらしてくれなかった。
…………キーパーは迎えに来てくれたのにね。
ある日の私は、屋上でのんびりとしていた七不思議を見た。話しかけた。好きになった。
告白した。否定された。
構わなかった。嫌いになられてもいいから、私は唯一残せそうな感情を持ったままでいたかった。そのままで生きられそうだから、腕に繋がった輸血パックの点滴なんて痛くなかった。
……それに気付いたとき、私は、私が、人形になりかけているのだと気付いた。
_________私はこのまま、人として死にたい。
気付けば私は蝶の標本のようにされ、死んでいた。
彼は恍惚とした笑みで、私を人のままで、純血のままで殺した…………らしかった。
私は更に彼が好きになった。
彼は……私の死に様を見てかなり気に入ったらしかった。
(…………叶わなくてもいい。私はこのままでいい。)
眺めているだけでいい。関わらなくてもいい。
そんな事が天使相手に叶う訳もなく。気付けば、私は彼の隣にいる事が増えた。
私は更に彼が好きになり、彼は私に構ってくれるようになった。
解剖している彼を眺め、標本か剥製か模型を作っている彼を眺める。たまに手伝う事もある。
そういえば、誰かに勉強を教えている彼とその生徒にちょっとしたものを用意した事もあった。
淹れたてのお茶は美味しいのだと言った事もあった。
そうしてのんびりと七不思議として生きていた。
でも、別れというものは来る。やっぱり来てしまう。
中途半端に殺され、七不思議になりきれていないのだから仕方ない。
そう思って諦めていた。
なぜか、私は彼と兄弟になっていた。
どうやら、憩さんが『血族』で無理矢理彼と繋げたらしく、そのせいで関係に歪みが生じてしまったらしい。だから兄妹ではなく兄弟なのかと少し合点がいった。
私、兄弟になっても彼が好きだ。
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