生贄にされた小瑠璃が紡ぐ、人のぬくもり

 「愛され」というタイトルに反して、男女の甘ったるさというよりも
 人と人のつながりや、鎌倉時代を生きるリアルさがじわじわ胸に沁みわたります。

 もちろん、追放した継母や意地悪な異母姉妹は“性格、救いようなし”な安定の悪役ぶり。
 懲らしめの瞬間はまだ先ですが、物語の行間に漂う“幸せの予感”に、安心してハッピーエンドに身を委ねられそうです。

 この作品は読むと、土と麦湯の香りごと鎌倉時代に連れて行ってくれます。
 醜女を理由に生贄担当の領地に差し出されたもの、前向きに生き周りに気を使う小瑠璃。
 彼女に身を重ねて読めば、自分も自然と背筋が伸び、“愛され”肯定感が満たされていきます。

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