闇闇玲奈
あれから、僕と玲奈の奇妙な関係は、日常に溶け込んでいった。
週に二度か三度、彼女は気まぐれに僕の前に現れ、そして僕の体を求めた。場所は、使われていない特別教室だったり、体育倉庫の裏だったり、時には屋上へ続く階段の踊り場だったりもした。僕はもう、それに何の疑問も抱かなかった。思考を放棄した僕の日常は、いつ来るか分からない玲奈からの「お呼び」を待つだけの、空虚な時間で埋め尽くされていた。
虚しい。惨めだ。分かっている。
だが、あの白い肌に触れられる瞬間、僕が焦がれた体を貫く瞬間だけ、僕は自分が生きていることを実感できた。たとえそれが、僕という人間が「便利な肉棒」として扱われているだけだとしても。僕は、その刹那的な快感という麻薬から、もう抜け出せなくなっていた。
その日も、そうだった。
放課後、誰もいなくなった教室で、僕は窓の外を眺めていた。すると、背後で教室のドアが開き、ハイヒールの音が、カツ、カツ、と近づいてくる。振り返るまでもない。この音の主は、世界で一人だけだ。
「よっ、浩介。ちょうどよかった」
玲奈は、僕の前の机に、どかっと腰を下ろした。短いスカートがさらに捲れ上がり、タトゥーの入った太ももが惜しげもなく晒される。彼女は僕の顔を覗き込むと、ニヤリと意地の悪い笑みを浮かべた。
「なんかさー、ムラムラするんだよね、今日」
そう言うと、彼女は僕の目の前で、わざとゆっくりとスカートの裾をずらした。ノーパンの、完全に無防備なそこが、夕日を浴びて生々しく現れる。
「ねぇ、ヤろ?」
僕はもう、言葉を発することすらなかった。ただ、椅子に座ったまま、無言で彼女を見つめる。それが、僕たちの間での「合意」の合図だった。
玲介は「やっぱ、話が早くていいわ」と満足げに言うと、僕の膝の上に、向き合う形で跨ってきた。そして、慣れた手つきで僕のズボンを下ろし、自身の中心で、僕の熱を捉える。
ポケットからタバコの箱とライターを取り出すと、彼女はカチリ、と火をつけた。紫煙を細く吐き出し、うっとりとした表情で天を仰ぐ。
「ん…じゃ、いくよ…」
次の瞬間、彼女は僕の肩に両手を置き、自らの体重をかけて、激しく腰を上下させ始めた。
杭打ち騎乗位。
僕の体は、ただの椅子。彼女が快感を得るための、ただの道具だ。
「あ…っ、ん、んぅ…っ!あー…やっぱ、これ、これぇ…っ!」
金色の髪が、彼女の動きに合わせて激しく揺れる。挟んだままのタバコが、その動きと共に明滅した。僕は、下から彼女の顔を見上げる。恍惚に歪む表情、潤んだ瞳、そして、時折僕を見下す、嗜虐的な笑み。僕の女神だった彼女が、僕の上で、僕を道具として、淫らに喘いでいる。その光景は、僕の脳を痺れさせ、思考の一切を奪い去った。
夕日が差し込む教室に、肉体がぶつかり合う湿った音と、彼女の甲高い喘ぎ声だけが響く。やがて、彼女の動きがひときわ激しくなり、甲高い絶叫と共に、僕の肩を掴む指に力がこもった。
「いっ、くぅぅぅ…っ!!」
僕の膝の上で、がくがくと小刻みに痙攣する玲奈。僕は、ただそれを受け止める。
絶頂の余韻に、彼女がぜぇぜぇと肩で息をしている。終わったのか。そう思った僕の思考を、彼女の言葉が打ち砕いた。
「…はぁ…はぁ…ねぇ、全然、足りないんだけど」
そう言うと、玲奈は僕の上からゆっくりと立ち上がった。まだ僕のものを咥えたまま、ゆっくりと。そして、完全に引き抜くと、振り返って僕を見下ろした。その瞳は、さらなる獲物を求める、飢えた獣のそれだった。
彼女は、近くの机に、黒いエナメルのハイヒールを履いた片足を、ガッと音を立てて乗せた。そして、大きく足を開き、僕の方へ腰を突き出す。挑発。いや、もはや命令だ。
「ほら、早く」
短いスカートから、彼女の全てが無防備に晒されている。
「次は、こっちから、めちゃくちゃにしてよ」
その、挑発的な命令と、あまりにも無防備で淫らな姿に、僕の中で、かろうじて残っていた理性の糸が、ぷつりと音を立てて切れた。
「…あ…ああああああああああッ!!」
僕は、獣の咆哮のような声を上げ、椅子から立ち上がると、無防備な彼女に背後から襲いかかった。考えるな。感じるな。ただ、目の前の肉体を、貪れ。
勢いのままに、僕は彼女を貫いた。
「んぐぅっ…!」
玲奈の喉から、苦しげな声が漏れる。だが、それすらも快感のスパイスでしかないとでも言うように、彼女はすぐに腰をくねらせて、僕の激しい動きを喜んで受け入れ始めた。
僕は、獣だった。
彼女の腰を掴み、ただひたすらに、激しく腰を突き上げ続けた。机がガタガタと揺れ、彼女のハイヒールが床を引っ掻く音が響く。憎しみも、愛情も、虚しさも、今はどこかへ消え去っていた。ただ、目の前の体を支配したいという、原始的な欲望だけが、僕を突き動かしていた。
どれくらいの時間が経っただろうか。僕が限界を迎え、彼女の中に全てをぶちまけると、ようやく長い獣の時間が終わった。
僕がずるずると床にへたり込むのを尻目に、玲奈はケロッとした顔で机から足を下ろした。そして、新しいタバコに火をつけると、満足げに煙を吐き出す。
「ま、こんなもんかな。じゃーね」
乱れたワンピースを直す素振りすら見せず、彼女はそう言い残すと、またハイヒールをカツカツと鳴らして、夕闇に染まる廊下へと消えていった。
静寂が戻った教室に、僕一人が取り残される。
体は、鉛のように重い。快感の残滓と、それを何倍も上回る、絶対的な倦怠感。
そして、心が空っぽになっていく感覚。
僕は、彼女の尽きせぬ性欲を満たすための、都合のいい道具。
快感を与えられれば与えられるほど、僕という人間の尊厳は削られ、魂は空っぽになっていく。
この地獄には、底がない。
僕は、ただ落ちていくだけだ。彼女という名の、快楽と虚無が渦巻く、底なしの沼の奥深くへと。
夕日が完全に沈み、教室が闇に包まれるまで、僕は床の上で動くことすらできなかった。
嫉妬と興奮と ヒロイン闇落ち編 写乱 @syaran_sukiyanen
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