私の仕事は、竜を弔うこと。――たとえ、貴方に剣を向けられても。

「竜葬司」――それは神聖なる竜の死を看取り、その魂を天へ導く、世界でたった一人の職業。リーナがその務めを果たすため、千年竜イグニスが眠る高峰の頂に降り立った時、彼女を待っていたのは鋭い敵意だった。

「友の亡骸を漁りに来たのか」

竜の番人として生きる青年エルは、リーナを死を冒涜するハイエナだと誤解し、その槍の切っ先を彼女に向ける。しかし、リーナは動じない。これは、彼女の誇り高き仕事なのだから。

死にゆく竜を挟み、対立する二人。しかし、竜の魔力を狙う闇の勢力の襲来が、二人の関係を変える。共に戦う中で、エルはリーナの仕事に宿る深い敬意と覚悟を知り、リーナはエルの内に秘められた友への愛情と孤独に触れていく。正反対の死生観を持つ二つの魂が、一つの竜の最期を守るために重なる時、そこに芽生えるのは確…続きを読む