概要
いもうとは、いぬだったのか 毛がぬけて、たまに吠えるし、なでるとくさい
屍人(ゾンビ)短歌を書いてみました。
以下は、バックストーリー(蛇足)です。
【本文より長いストーリー】
幼い妹がゾンビウイルスに感染し、発症した。
三つ上の兄は、不安な心を殺しながら、妹の看病を続けていた。
けれども、症状は日々進行していく。
医者はついに、殺処分が妥当との診断を下した。
両親はすでに精神の限界を迎えていたが、兄はひとり回復を信じていた。
ベッドの横にはまだ使われていない新品の学校鞄。
妹は来年、小学校に入学するのを楽しみにしていた。
「きっと、治るよ」
兄がやさしく声をかけると、病床の妹は、力なく微笑んだ。
そしてある日、彼女はついに理性を失い、自身を看病している兄の肩に噛みついてしまう。
そのとき彼が感じたのは、鮮やかな腐敗臭。
以下は、バックストーリー(蛇足)です。
【本文より長いストーリー】
幼い妹がゾンビウイルスに感染し、発症した。
三つ上の兄は、不安な心を殺しながら、妹の看病を続けていた。
けれども、症状は日々進行していく。
医者はついに、殺処分が妥当との診断を下した。
両親はすでに精神の限界を迎えていたが、兄はひとり回復を信じていた。
ベッドの横にはまだ使われていない新品の学校鞄。
妹は来年、小学校に入学するのを楽しみにしていた。
「きっと、治るよ」
兄がやさしく声をかけると、病床の妹は、力なく微笑んだ。
そしてある日、彼女はついに理性を失い、自身を看病している兄の肩に噛みついてしまう。
そのとき彼が感じたのは、鮮やかな腐敗臭。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!成れの果てどうしが寄り添っている。魂が消え去るまで。
悲しい連歌です。
どうしてこうなったのかは、わかりません。
妹が、人でなくなります。
兄も、そうなります。
でも人でなくなった直ぐの頃の兄には、微かに意識が残っています。
薄ぼんやりと世界を眺めているのです。
そんな僅かな意識もやがて消えてゆきます。
表す漢字が消えて、モノの意味も失われます。
ふたりとも悲しみは、すでに無くなっているのでしょう。
まるで、兄妹の有り様を和歌で知らされる者が、ふたりの悲しさを全部引き受けたようです。
失われる気持。消えてしまう愛情。
なぜかとても寂しく、悲しいのです。
どうぞ、皆様もこの奇妙な哀切をご鑑賞くださいますように。 - ★★★ Excellent!!!ゾンビ化していく兄妹。その悲しみと、徐々に失われて行く『自己』
ゾンビの目から世界を見る「悲しみ」という視点がとっても斬新です。
妹がゾンビとなり、看病していた途中で両親も妹が殺してしまう。
その後もゾンビとして生存(?)だけは続ける悲哀。ゾンビとしての状態に終わりはあるのか。
理性もほぼ壊れているような状態で、家族との思い出に浸る。
そして、徐々に「自己」の感覚も薄らいでいく。
ゾンビの視点で短歌を詠むというのが面白いですし、更にゾンビとなった兄妹が理性を失っていく過程の哀しみの描写も繊細で心に沁みてきます。
たしかにゾンビになったらこんな風な変化があるだろう、という描写や情緒の揺らぎなど、すごく興味深い仕上がりになっています。