特に序盤は少々とっつきにくいのですが、決して読みにくくはありません。文章は堅めながら、むしろ読みやすい部類に入ると思います。
キリスト教やらナチスドイツやらの要素がふんだんに盛り込まれていますが、それらの要素が物語を過剰に複雑にしていません(私は、自身がクリスチャンであって、聖書やキリスト教史に慣れ親しんでいるせいもあるかもしれませんが)。文章力と構成力に優れた作品です。
物語として見た場合も、複数の時代や、時には主人公が書いている小説の世界までもが入り乱れながら、読み手を混乱させないだけの構成上、描写の配慮が感じられました。かなりレベルの高い物語だと思います。
腰を据えてじっくり読んでみたい一作です。
読み進めるほどに、「いま生きている自分」と、遠い時代の誰かの息づかいが、ふっと重なるような感覚がありました。京都とベルリンをはじめ、場所も年代も変わっていくのに、物語の芯には“同じ何か”がずっと流れていて、その連なりがとても印象に残ります。
輪廻転生という大きな題材を扱いながらも、語り口はどこか静かで、人物の心の揺れや祈りのようなものが、丁寧に描かれているように感じました。
忘れてしまうこと、思い出してしまうこと、そのどちらにも意味があるのかもしれない
そんな余韻をそっと手渡される感覚がありました。
戦争や権力、抑圧といった重い影も背景にありつつ、そこで失われないものが確かに描かれていて、読みながら胸の奥がじんわり温かくなる瞬間が幾度もありました。
恐らく作者さまには、もっと書きたいこともあったでしょう。それを12章で完結させることの難しさと素晴らしさ。私にはない力を感じました。
素敵な作品を届けてくださってありがとうございました。