夢を持つ人に。

付箋をして、取っておきたくなるフレーズが幾度も登場する。

夢を見る権利はあっても、無言のまま、いつかそれを手放さなければならない。
そんな事情が訪れる人のほうが圧倒的に多くて、
主人公・灯里もその一人。

彼女の場合、一度は夢に限りなく近くことができてしまったことが、
かえってつらい過去、現実を突きつける。
そしてもう一人の主人公・梓那もまた、叶わなかったある夢に囚われている。

強い存在ではない。ただ身を寄せ合うことに似た、
お互いの前に立つことで精一杯だったような、とても痛く脆い関係だった。
それでも言葉を重ね、美しさを探し、追い求め、
その姿は人ひとりの、そして誰かの心に響いていく。

持ち主を忘れた音色が、海を渡っていく。
そんな光景が、ふと浮かんだ。