額縁に飾る細胞

深恵 遊子

額縁に飾る細胞

あの頃に吐いた言葉は飾られる 細胞すらも残らないのに



「待ってくれ」あの日に消えた末期まつごの眼 手には取れない病窓びょうそうの月



テセウスはく 白波しらなみ舵機だき握る手も置き去りに 迷うことなく



長じてもその日暮らしをするらしい 黄粱一炊こうりょういっすい思い出し笑い



吸う息が己を燃やすのだと聞く どうりで身からボウボウと鳴る 



あめつちの神でもびるものだから 人の身ならばさびくらい出る



遠ざかる 「水田映すいでんはえる阿蘇あその山」 原風景あるいは言の葉



額縁に飾る細胞、かつてボクだったもの 銀のエピメテウス

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

額縁に飾る細胞 深恵 遊子 @toubun76

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画