おわりに

 これにて、『収集資料:S団地“夜泣き”に関する記録』は以上となる。まず、ここまでお読みいただいた読者の方には心から感謝を申し上げたい。

 さて、私がこれを書くに至った経緯についてお話ししたいと思う。

 私は、Rさんのことを行政に通報した者だ。

 私は20年ほど前から、S団地に住んでいた。住み始めて数年のころ、「団地の空室に赤ん坊が放棄されている」という噂が流れた。私は団地を探し回り、当時のRさんを発見した。彼を養護施設に引き取ってもらい、それで事態は収束するだろうと思った。

 しかし、泣き声がやんだことで住民たちは「住民全員が赤ん坊を見殺しにした」と勘違いをしたようだった。住民らの後悔や罪悪感は時間を追うごとに膨れ上がり、ついには幽霊を生み出すに至ってしまった。でも、誰もRさんやその母の姿を知らなかったから、幽霊の姿は曖昧なままだった。

 私は幽霊が生まれるより前に引っ越してしまったから、このことを知らなかった。私がこの件を認識したのは「オカルトmook誌に掲載された記事」を読んだときである。

 そして、これを執筆した一番のきっかけは「地方紙に掲載された活動紹介記事」を読んだことだ。あの記事を見たとき、あの子ではないかと思った。施設で確認がとれたとき、彼が「幽霊」になっていることに思い至ったとき、絶対に書かなくてはならないと思った。

 「幽霊を成仏させるため」、これが、私がこの文章を書くに至った理由だ。

 皆さんにこれを読んでいただき、正しい認識の人間を増やすことが私の目標である。そして、S団地の幽霊の成仏を少しでも助けることができれば、と思う。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

収集資料:S団地“夜泣き”に関する記録 久屋白湯 @sayasa1208

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ