“色視の少女と壊れた男”

──絶望の街で、感情〈いろ〉だけがまだ生きている。

「魔法弾圧×軍政×スチームパンク」の世界で、感情が“色”として見える盲目の少女・ルチア。
裏社会で生きる彼女が出会ったのは、両腕を失い機械義肢に変えられた元男娼“シー”。
滅びた魔法、暴力と監視が支配する都市スラムで、2人は“感情”をめぐる小さな選択から、やがて世界の深層へと巻き込まれていく――。

とりわけ印象的なのは、“色”で他者の心を読み取るヒロイン視点の描写。
「絶望」「優しさ」「嘘」など、すべてが色で表現され、退廃したスラムの情景や登場人物の本音が鮮やかに浮かび上がる。
壊れていながらもどこか人間味を残すシー、彼を“拾う”ルチアの優しさと覚悟も胸に刺さるポイントです。

物語は、“感情”が武器にも呪いにもなるディストピアで、静かな絶望と、ほのかな希望が交差するサスペンス。
2人の行く先にどんな光が差すのか、続きが気になって仕方ない一作です。

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