異能のおかげで何とかスラムの中で生きている主人公が、命を救った男と共に暗い世界を生き抜いていく異世界ファンタジー作品です。
主人公は他者の感情を色として認識できる少女。
その異能を活かして、普段は暴き屋として上司から仕事を得ています。
ある日、彼女が目にしたのは、スラムの中でも最底辺の烙印を押された男。
身体は死にかけ、言葉はぶっきらぼう。しかし、宿った感情はこれまで見たことのない色。
そんな存在に興味を惹かれ、主人公は男の命を救います。
例え死にかけでも、ただ飯喰らいは許さない。同時に、後ろ盾のない特別がいつまでも自由であるとも限らない。
主人公と男に迫るのは、低い立場ゆえの様々な悪意。
果たして二人は、苦しい世界を生き抜くことができるのか。
ぜひ読んでみてください。
かつて魔法と芸術の都と呼ばれた街は、
今や煤と煙が支配する退廃のスラムへと堕ちた。
人の感情が「色」で視える少女・ルチアは、
ある日、路地裏で壊れかけた義手の男娼を拾う。
名前はウデナシ。
すべてを失い、死を選びかけていた彼の中に、
それでも消えなかった「色」があった。
傷の癒えぬ二人が交わす、不器用なやり取り。
その手のひらと皮膚の熱だけが、唯一のぬくもり。
だが、街は決して彼らを見逃さない。
壊れた名女優、劇場に渦巻く陰謀、
そして「感情を見る目」が暴く、深すぎる闇。
これは、「見える少女」と「見ないふりをしてきた男」が、
互いに触れながら少しずつ生を取り戻していく物語。
魔法の王国が滅び、機械と論理を掲げる勢力が支配する世の中。
復興後の荒れた都市で、光は見えないが人の心を「色」として見ることのできる少女、ルチアは「魔法使い」への弾圧に怯えつつ、スラムで仕事を貰って暮らしていた。
そんなある日に彼女が出会ったのは、両腕を機械の義手に変えられた、うち棄てられた男娼ウデナシ。
圧し潰された魔法と暴走する技術のなか、歪な背景を引きずりながら、二人はどこへ向かうのか。
荒れた世相、君臨する機械機関、瓦解した魔法文明のちらばる残骸が目に見えてくるようなスチームパンク&ノワールファンタジー。
視覚と感情の濃密な重奏に圧倒される作品。
旧首都リーステルトの街並みは、単なる背景ではなく、感情を染めるフィルターでもあります。
ルチアの「感情の色が見える目」という設定は、物語に独特の詩情と緊張感をもたらし、視覚と感覚を通して世界の裏側に立つ。
文章のリズムは抑揚のあるフレーズで構成され、短い独白と情景描写が交互に差し込まれることで、静かに張り詰めた緊張感が持続します。
会話部分の語尾や間の取り方も、キャラクターの距離感や関係性を繊細に伝えるテクニックとして機能して、ルチアとカイのやり取りに軽妙なリズムが生まれています。
テーマの重さと個人の物語が交錯する構造も巧みで、魔法暴走と政治的圧迫、スラムの現実と個人の選択が、単なるファンタジー的設定にとどまらず、生々しい息吹を伝える舞台となっています。
全体として、暗く退廃的な世界観と鮮烈な感情描写が絶妙に交差し、キャラクターと街の物語が重なり合い、文学的なテクニックを駆使したファンタジー作品として、単なる冒険譚に終わらない深みがあります。物語の展開を追う楽しみと同時に、言葉の音と色彩の響きを味わう楽しみも提供してくれる、非常に贅沢な一編。
──絶望の街で、感情〈いろ〉だけがまだ生きている。
「魔法弾圧×軍政×スチームパンク」の世界で、感情が“色”として見える盲目の少女・ルチア。
裏社会で生きる彼女が出会ったのは、両腕を失い機械義肢に変えられた元男娼“シー”。
滅びた魔法、暴力と監視が支配する都市スラムで、2人は“感情”をめぐる小さな選択から、やがて世界の深層へと巻き込まれていく――。
とりわけ印象的なのは、“色”で他者の心を読み取るヒロイン視点の描写。
「絶望」「優しさ」「嘘」など、すべてが色で表現され、退廃したスラムの情景や登場人物の本音が鮮やかに浮かび上がる。
壊れていながらもどこか人間味を残すシー、彼を“拾う”ルチアの優しさと覚悟も胸に刺さるポイントです。
物語は、“感情”が武器にも呪いにもなるディストピアで、静かな絶望と、ほのかな希望が交差するサスペンス。
2人の行く先にどんな光が差すのか、続きが気になって仕方ない一作です。